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2024年9月29日 (日)

大事な人が去っていった

いきなり七之続を読んだ反省をふまえ、素直に順番に読んでいこうということで、「三鬼」を読みました。
言わずと知れた宮部みゆきさんの三島屋変調百物語の四之続になります。
Zm240926
表題作「三鬼」はやはり読み応えある大作なんですが、このシリーズのファン的には次の「おくらさま」ですよ。
もう内容が盛りだくさんすぎて濃すぎて胸やけしてちょっと横になりたい感じ。

あらすじ【三鬼】
■迷いの旅籠
一人のマッドサイエンティストが田舎の村を巻き込んで行う死者よみがえり実験は当然のごとく失敗し、大惨事を巻き起こす。そんな未曾有の大惨事なのに、語り手がオドオドした12歳の女の子というギャップがじわじわ来る話。

■食客ひだる神
三島屋が花見イベントの時に注文する仕出し弁当屋は評判の繁盛店だが、花見が終わると秋の紅葉狩りシーズンまで閉店となる。弁当屋の店主は若い頃からひだる神という餓鬼に憑かれており、ひだる神が太り過ぎないよう「夏季限定ひだる神ダイエット作戦」が展開されていた。店主が超ポジティブなため、百物語でおそらく後にも先にもない全編オモシロ話。

■三鬼
妹をかどわかされ傷物にされた侍が私闘により敵討ちを行ったため、これまた別件で微罪を犯した気の短い砲術士と共に寒村の警護職に就く沙汰となる(要するに飢饉スレスレの貧しい村に懲罰を兼ね『死んだら死んだでまあいいか』的な左遷)。そこには弱った老人や病気の子供だけを狙って命を奪う鬼がいた。侍と砲術士は生きて帰ってくることができるか?そもそも鬼とは誰のことなのか。
仲の悪いバディがなんだかんだ力を合わせ解決に向かう燃え話。

■おくらさま
美仙屋という屋号の香具屋には、姿は見えないが「おくらさま」という守り神がいて災厄から屋敷を守っている。大火事の延焼もおくらさまの御力(みりき)によって美仙屋だけススひとつ付かず焼け残った。が同時におくらさまも力を使い果たし消滅。おくらさまが消え去る刹那、美仙屋のその代の娘をひとり、次のおくらさまとして人の世から連れ去ってしまう。美人三姉妹(17歳「藤」、15歳「菊」、14歳「梅」)の中で一番綺麗だったお菊お姉さまを取られた三女の梅は激しくいきどおり、守り神として存在はしているが、姿が見えなくなったお菊に寄り添うように屋敷の奥に引きこもる。語り手はそのまま老婆となったお梅さんだが、語り終えるとともに姿を消す。お梅さんが消える瞬間おちかも気を失ってしまい、夢だったのか現実だったのか判然としない。真偽を確認するため「美仙屋・香具屋」というキーワードから、貸本屋に「江戸買物独案内(えどかいものひとりあんない)」をバックナンバーごと借り受け、その貸本屋の若旦那も巻き込み、富次郎主導で一大捜索がはじまるが…

おくらさまの説明長いんですけどね。
この話の本質はここじゃないんですよ。
おくらさまについてお梅おばあさんの語りが始まるよりも前段階、
まず恵比寿屋に奉公に出ていた三島屋の次男富次郎が、奉公先で手代同士の喧嘩に巻き込まれ転んだ際、頭を強く打って意識不明の重体。どうにか意識を取り戻したが、しばらくはめまいと頭痛でまともに奉公ができない…というか恵比寿屋の真摯な謝罪のもと三島屋に帰されてきた(ここで富次郎が初登場)。当面はプラプラとニート暮らし。さっそくおちかの「変わり百物語」に興味を示し、隣の部屋でこっそり話を聞きたいとお調子者全開。
それはまあいいですわ。それと相前後して、別小説からのスピンオフでサブレギュラー入りしていた青野利一郎が久しぶり登場。一度禄を離れ、浪人暮らしで子供向け手習い塾の雇われ先生をやっていて、雇い主の老先生の家に住み着いた魔物の話(2巻表題作「あんじゅう」)を語りに来たあの若先生が、どうやら故郷で士官の口が見つかったらしい。見つかったというか旧知の先方から入り婿として来て欲しいと。明日をも知れぬ病身の友人から頼まれて、利一郎は断りにくいしそもそも浪人から侍に返り咲き。おちかさんはこの話を聞いて以降、気持ちのよりどころが無い。泣いてすがって行かないでと言える立場ではないし、そんな性格でもない。利一郎はおちかさんの気持ちを知ってか知らずか必要以上に語らず。
いずれこの二人は結ばれるんだろうなと思っていた読者も寝耳に水。
そんなふわふわした状況ではあるものの、目の前で忽然と消えたお梅さんの謎を追うため、貸本屋の持ってきた江戸買物独案内(るるぶとか東京ウォーカーみたいな感じ。宮部さんの創作かと思ったら実在した物らしい)を大量にめくっていく。同時に貸本屋自身にも心当たりを当たってもらい、ついに実在したお梅さんのところにたどり着くが、もうほぼ臨終の床。お梅さんは自分の寿命が残り少ないことを悟り、生霊となっておちかさんの元へ、どうしても聞いて欲しい話をしにいった。
今わの際のお梅さんから「わたしのようになってはいけない」との言葉を貰ったおちかさんは、新しい場所へ踏み出せるのか?

という内容です。
手習い塾の若先生は、別作品で辛い身の上から始まり、三島屋シリーズにやってきて、おちかさんに暖かい光をさしかけながら、誰がどこから見ても文句の付けようがない理由で物語から去っていきました。そして同時にレギュラー入りする富次郎貸本屋の若旦那次巻「あやかし草紙」が待たれる。

ちなみに「おくらさま」が極厚エピソードすぎて他がかすみがちですが、「迷いの旅籠」はヤベエ話だし、劇場版のような「三鬼」も
「これ1本で小説いけるんじゃね?」
という極太話。それらに挟まれて「食客ひだる神」はずっと愉快な落語を聞いてるようなほんわかエピソードで最後ちょっと泣かせる話。

珠玉のエピソード群で読み流していくにはもったいないですが、後がつかえてますので、次いで「伍之続・あやかし草紙」を読みたいと思います。わかってますよ。この巻、大事な話ですよね。

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