平成ライダーは総括できませんでしたという総括映画
※割とネタバレがあります。
まとまったお休み中に「劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer」を見てみました。
(前年の仮面ライダーセイバーがあまりに面白すぎたためセイバーロスで次のライダー(リバイス)を見る気がおきない病)
漏れ聞こえてくる事前情報によると、
「奇想天外なバカ映画で泣かされる」
とのこと。
そんな映画ある?
と思って見てみたのですが、見終わった感想としては
「奇想天外なバカ映画でファンの20年間の気持ちに寄り添ってくれ、しみじみ泣かされる」
映画でした。
視点を少し変えると、DA PUMPの「P.A.R.T.Y.」という曲の「割と長めのミュージックビデオ」と言えなくもない。
この映画のあらずじを説明する前に、仮面ライダージオウの物語をある程度は説明しなければ、映画の内容は1ミリも伝わらない気がします。
あらすじ仮面ライダージオウ
50年後の荒廃した世界。仮面ライダークウガからビルドまでの19人の仮面ライダーを撃ち滅ぼしその力を奪い、魔王の名を欲しいままに世界に君臨する「オーマジオウ」という名の仮面ライダーのなれの果てがいる。
魔王に勝てないと悟ったレジスタンスのゲイツとツクヨミは、
オーマジオウが過去において原初たる仮面ライダージオウに変身する前の「普通の高校生 常盤ソウゴ」を抹殺すべく、タイムマシンで現代にやってくる。
現代。常盤ソウゴは、王様になりたい夢を持つ平凡な(ちょっとアホな)高校生である。
このあまりに能天気な青年が50年後の魔王とはにわかに信じられないゲイツとツクヨミ。そのときふいに物影から現れた不審な男ウォズ。
ウォズ「我が魔王!このベルトをつけ仮面ライダージオウとなり、19人の平成ライダーの力を継承するのです。そうすれば貴方は最強の魔王となるでしょう」
止めるゲイツも間に合わず、襲ってきた第三勢力を倒すため、あれよあれよの間にジオウに変身する常盤ソウゴ。
以降、ソウゴはライダー1人1人を倒して力を奪ったオーマジオウと違い、ライダー1人1人と友達になり力を譲り受けていく。その過程においてソウゴとゲイツは友情に似た感情を持ち始める。
両親を早くに亡くし友達もおらず心が壊れて魔王になってしまった歴史を、ゲイツはソウゴと友達になることにより変えてしまった。この世界線において、もうあのような魔王が生まれることはないだろう。
しかしオーマジオウは50年後の未来から常に過去の自身を見ている。
魔王「若き日の私よ、お前の選択次第では、いつでも私になれるのだ」
18人のライダーの力を継承し、残るは仮面ライダードライブの力を残すのみである。
そして映画に。
あらすじ劇場版仮面ライダージオウ Over Quartzer
さていきなり戦国時代。
織田信長が密かに思いを寄せるクララが歴史の改ざん者たる何者かに狙われていて、このままではクララの子孫クリム・スタインベルトが誕生せず、クリムが開発した変身ベルトを持つ仮面ライダードライブが誕生しなくなってしまう。
常盤ソウゴとその仲間たちは過去に飛びクララを助け、結果19人の仮面ライダーすべての力を手に入れた。なお織田信長自身は後年に伝わるような魔王感はみじんもなく、恋に生きる平凡な好青年だった(なおクララにフラれ号泣)。
現在の私たちによく魔王と伝わりがちな信長が実は普通の青年というのは「オーマジオウの過去を見に行ったら普通の高校生常盤ソウゴ」と対になっているこの映画の前半のテーマ。
ソウゴが現代に戻ってみると、歴史の管理者を標ぼうする集団「クォーツァー(ダパンプ)」が現れる。
ダパンプクォーツァーのリーダーISSASOUGOから「お前は私の偽物。ウォズにそそのかされ私の代わりに19人のライダーの力を集めてくれてありがとう。私が本物の王。お前はもう用済みだ」と、ライダーの力をすべて奪われ投獄される。
なおこのSOUGOの目的は「クウガから前作ビルドまでの物語や世界観が各ライダーでバラバラでいびつで美しくない。すべての平成ライダーの歴史を消し、私が統一感のある美しいひとつの仮面ライダーに作り替える」というメタ発言者も驚いて逃げ出す歴史改変を行うことである。
なんのために今までと牢内で泣き崩れるソウゴ。しかし隣の牢にいた謎の男に突然痛罵される。
謎の男「たとえ偽りでもお前はライダーに選ばれたのだ。選ばれなかった者はごちゃまんといる。その者たちのためにも、お前は立ち上がって進んでいかねばならないのだ」
当時無許可でやっていて創造主(東映)に怒られた謎の男から痛罵という名の激励を受けたソウゴは救助に来た仲間と共に脱獄し、SOUGOが変身した仮面ライダーバールクス※と戦うが、偽物の王という負い目があり押し負けそうになる。
※生粋のライダーファンISSAさんは変身シーンの前夜、寝られなかったとのこと。
劇場版になると当たり前のようにかけつけてくれる先輩ライダーたちももう存在しない。
そのとき未来世界のオーマジオウがソウゴの精神世界に現れ、ソウゴが幼いころ自ら「僕は王様になる」と言った記憶を見せ、静かに語り掛ける。
魔王「若き日の私よ、お前は誰かに言われて王になったのではない。自ら王になりたいと望んだのだ」
※ここちょっと泣ける
魔王はソウゴに自らの力を託すと消えていった(多分このとき魔王は死んだ。もしくは何の力も持たない老人になった)。
オーマジオウの力を得たソウゴに呼応するように19人の仮面ライダーも復活した。それどころか突然「web配信限定の仮面ライダーブレン」、「漫画本から漫画線のまま実体化する仮面ライダークウガ」 、「舞台公演のポスターから仮面ライダー斬月」 、「タブレットの動画からゴライダー」 、「SM○Pの番組企画の仮面ライダーG(主演の稲○五郎は出ない)」が復活。
5人が画面右から歩いてきてライダーパンチという一連の流れるアクションはシビレル。
ついに平成ライダーがあふれ出した。ソウゴをだましてライダーの力を集めさせていたウォズ(彼もいつのまにかソウゴに魅かれていた)は突然カメラ目線で観客に言う。
ウオズ「今までご清聴ありがとうございました。ご案内出来るのは、ここまでです」
※ここもちょっと泣ける
ウォズも今度こそ正義の側に立ち戦い始める。倒しても倒してもあふれ出てくる正義のライダー達の猛攻(番組ロゴキック)に、
仮面ライダーバールクスは当時の小渕官房長官のように「平成」のパネルを掲げて倒された。
いやどんな文章書いてもわかりにくいんですけどね。
今回のSOUGOの発言と目的は、番組プロデューサーの迷いと決断のようでもあり、熱心なファンの暴走心理のようでもあり、作り手側(創造主)から作品に干渉していくのは、石ノ森さんが得意とする「神々との戦い」のようでもあります。
正確に伝える術がないんですが、ウォズの「今までご清聴ありがとうございました」というのは2~3歳のころ仮面ライダークウガに出会い、以後約20年ライダーを見続けてきていい年になった子供たちに旅立ち(明るい決別)を促しているようで、ウッカリすると泣きそうになるんですよ。
歴史の管理者クォーツァーという組織も一枚岩というわけではなく、今回のSOUGOの歴史粛清に特に積極的に手を貸そうとはしないが、物語最後で主人公に「本当に歴史をリセットしなくていいのか?綺麗な仮面ライダーの歴史が作れるんだがな・・・」と問いかけ、ソウゴの「みんないびつでみんな違うのがいいんだ」という決意を聞いて、さわやかに笑って去っていく(全員1個ずつセリフ貰って頑張ってます)。多分ソウゴの回答次第では一触即発だったと思います。
奇想天外な内容なのに上映時間60分ちょっとなのも衝撃な娯楽作品でした。
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コメント
こんにちは。
この映画のことは前から知っていて、クォーツァーたちが出るシーンだけ何度も見たのですが(笑)そういう話だったのですね!
妹の息子くんが仮面ライダーファンなので、ざっくりあらすじは聞いたのですが、なぜ信長が出るのか?など全く理解できていませんでした。
こちらを読んで、ある程度分かったような気がします^^
当時幼稚園児の息子くんに、ライダーの名前をいちいち尋ねたら「そんなことも知らないの?」と言いたげな冷たい目で見られたのは良い思い出です(笑)
投稿: かもねぎ | 2022年5月 3日 (火) 20時27分
かもねぎさんこんばんは!!
DA PUMPファンですよね?
でもまさかこの映画のことをご存知でさらに「クォーツァーの場面だけ」とはいえ、先に見ておられたとは知りませんでした。
せっかくだし時間にして60分くらいしかないので、他のシーンもご覧ください。
ライダー1人1人の名前はまあこの際わからなくても大丈夫です。
信長のくだりも牢の中の謎の男も正直要らないような気がするんですが、全体を通してみると、いややっぱり要るよなあとなる不思議な映画です。もろ手をあげておすすめできませんが、それでもおすすめします。
投稿: 早瀬五郎 | 2022年5月 4日 (水) 22時43分