※先に謝罪します。今日の記事、乱暴でごめんなさい。
もうブームも去ったし、今なら読めるだろうというわけで、KAGEROUを読んでみました。
ナントカOFFという、古本屋さんのさらにワゴンセールで、娘が「謎解きは晩飯後」という小説を驚くほどの値段で発見し、じゃあ父さんがプレゼントするよってその本をつかんだとき、手が当たってついでで買ってみました。さらなる安値でしたし。
一言でいうなら、「うそーん」ていう感じの小説でした。
娘が「謎解きは『お嬢様はアホで御座いますか』」を読み終わったら、口直しに貸してもらおうっと。
あらすじ【KAGEROU】
ビルの屋上から今まさに身投げ寸前という自殺志願の40歳独身男が、ドナー提供者を探す黒服の男に呼び止められ、説得され、自分の体を金で売る決意をする。
命とは何か? 魂とは何か?
・・・すみません、最後の1行、盛りました。そんな心が打ちふるえるような内容ではないです。
各種道具立てに説得力がないんですよね。
全日本ドナー・ナントカ協会(全ド協)という架空の団体のエージェントが、おあつらえ向きに自殺者を直前でつかまえて説得するのもアレですし、
裏世界で医療技術が進んでいて、脳も心臓も、腕も、歯も、目も、表世界の医療技術よりはるかに高度に移植でき、副作用もない的な架空技術もアレですし、
主人公である自殺志願者の、自殺に至る経緯も、心ゆさぶられるような
「ひどい人生ですね、そりゃ生きるのがつらいよ」
とは微塵も思えないのもアレですし(良い小説というのはそういうところがグイグイ引き込む読ませどころなんですが)、
中盤で心臓の弱い美少女が出てきた時点でもうアレですし、
主人公とエージェントの奇妙な友情めいた展開と、エージェントが心労がたたってきて寿命が短いな的な急な伏線もアレですし、
この小説を読んだ人ならおわかりと思いますが、ベッドの角度を手動で変えるハンドルが、たまたま、とある機械にもささってゼンマイ駆動に成功するとかもアレですし、
ゆーても当時批判されたのは、多少はやっかみがあるじゃんと思ってた自分は甘かった。
最後のオチのところが、好意的に読めば、3通りくらいの見方ができるわけですよ。ネタバレするわけにいかないのでボカして書きますが、
1)主人公は助かった
2)エージェントが主人公をおもんばかった
3)副作用
1)はまあ、魂入れ替えモノ(あ、言っちゃった)でよくある、手垢まみれのオチなので、クッッッッッッッッッッソ寒いですが、それでもなお、全ッッッッ然そんな気配も見せずに、ほんのかすかに1)を匂わせてたら、この小説は成功かもしれない。ただそれはない。あきらかに生き返ったていで書かれてるから。
研究家が現れ、何十年と賛否両論わかれて議論されるくらい、あのオチが「どっちなの?」的だったらまだ救いがあるんだけどなあ。
2)でも超絶ありきたりだし。そもそもそれだとクッソ駄作ですよ(断言)。
読むのに時間がかからないのはかすかな救い。遅読の私でも小2時間ほどで読めましたので。速読家なら30分くらいで完走できるでしょう。
平易な言葉で紡がれているにもほどがあるとは思いますが。
とりいそぎ『お嬢様はアホで御座いますね』を読みたい。
最近のコメント