コールドゲームというよりも
↑ボテボテのゴロで、3塁ランナーがどうにか帰って勝った感じ
荻原浩さんの「コールドゲーム」を読みました(新幹線移動のお約束)。
まあまあの面白さですね。メリーゴーランドの後で読むと、見劣りする気がしないでもないですが、これは個人差でしょう。
登場人物に感情移入できるかできないかで、大きく変わります。
あらすじ【コールドゲーム】
高3の夏、高校球児を引退した光也は、幼馴染で今は土建業の亮太から「中2の時のクラスメイトがあいついで不慮の事故にあっている」と聞かされる。亮太いわく、「これはトロ吉の復讐だ」と、クラスメイトのほとんどからイジメられていた廣吉の名前を出す。最初は取り合わなかった光也だが、旧・級友が、出席番号順に大小さまざまな被害にあっていくにつれ、廣吉を止める決意を固める。
これねえ・・・高3から数えて中2、つまり四年前の、「担任すら含めたクラス単位のいじめ」に関して、「光也は傍観者」、「亮太はいじめの首謀者」と、どうも読んでてスッキリしないんですよねーーー。
光也の、「傍観者だったことへの贖罪的行動原理」はわからんでもないですが、亮太にはほんとに感情移入できない。文中、特に反省してるようにも読み取れないですし。まあそこがリアルといえばリアルですよ。光也の方がスーパーヒーロー寄りなんで、なおさら。
正体不明の敵に、かつてのクラスメイトが一人ずつ血祭りにあげられていくという展開にミステリ要素があるのかなと思っていたら、前述のあらすじのごとく、犯人は割りと早い段階で廣吉という人物であると明示され、それらしき人物が主人公のまわりを暗躍しはじめる。
と、みせかけて実はフーダニットのミステリも味わえます。意外な犯人といえなくもないですが、順当といえば順当な配置。ミステリを読みなれてない人は「ええええ!」って驚けると思います。
テーマがいじめだし、ハッピーエンドじゃないしで、基本、楽しめない小説ですが、要素を切り離して各部を楽しもうと割り切ると、光也がかつてのクラスメイトを集めて迎撃チームを作ろうとするところは少し楽しめます。
ひきこもりの堀井を連れ出しに行く場面、「そっとしておいて」という堀井の母親を無視し、部屋の前で「出て来い」「いやだ」合戦をやっていると、ピザーラの店員がやってくる。堀井がドアの隙間からピザだけ受け取ろうとしたところに亮太他数名が手を差し入れ、堀井をひきずり出すシーンは笑えます。
亮太「ピザ屋!お前も手伝え」
地の文:ピザ屋も加勢した。引きずり出され、わめく堀井。
ピザ屋「あんた、外に出たほうがいいよ」
地の文:ピザ屋は代金を受け取ると帰っていった。
このへんの、書き手の「筆が滑った勢いじゃないか?」っていうライブな感じが好き。
それ以外は終始、読んでて暗くなる作品なので、気持ちが沈んでる人にはあまりオススメできません。元気ハツラツで、ありあまったエネルギーどうしようという人がブレーキ代わりに読むのがいいかも。
コールドゲームってほどスッキリ勝って終わったって感じじゃないですからね。
荻原さんは「誘拐ラプソディー」を探してるんですが、なかなかブックオフの100円コーナーでお目にかかれない(定価で買いなさいよ!!)。
せっかく読むんなら、スカッとしたエンタメ読みたい。
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