気付かれない努力をする男と、気付いてない努力をする女
乙一さんの、「暗いところで待ち合わせ」を読みました。
冬の寒空が良く似合う作品でした。
乙一さんといえば、以前「THE・BOOK」を読んだんですが、なるほど、空気感は似てますね。
この人の作品、もっと読んでもいいかもしれない。
あらすじ【暗いところで待ち合わせ】
警察に終われている男が、目の見えない女性の家にだまって勝手に隠れ潜む話
これは、乙一さんがあとがきの冒頭に書いた一行ですが、破壊力ありますよね。これに惹かれて読んでみました。
なお、まじめに書かれたあとがきはその一行だけで、あとはダイエットの話と、ダンスダンスレボリューションの説明に終始し、乙一さん自身が「このあとがき大丈夫か?」と心配するほど。これも一見の価値があります。
さて、作品自体に関してですが・・・
徐々に視力を失っていき、大学を辞めざるを得ず、親戚からも疎まれ、亡き父との思い出の家でひとりひっそりと暮らす若い女性を主人公と見るべきか、人と交わるのが苦手で、職場で軽いいじめ状態にあっていて、とある事件から逃げ、他人の居間の片隅に膝をかかえてうずくまり続ける若い男を主人公と見るべきか、悩みどころですが、まあ、二人主人公なんでしょうね。
目の見えない人って、他の4感がすぐれてる気がして(聖闘士星矢見すぎ)、他人がこっそり同居してても嗅覚や聴覚でばれそうなもんですが、そこはエンタメ小説として目をつぶりたいところ。
実際、この若い女性も、かすかな衣擦れの音や、畳のきしむ音と、耳だけで聞いてるテレビから流れる「(住んでいる家のすぐ近くの)駅のホームで、会社の同僚を、急行列車に突き落としたと見られる男性、逃亡中」のニュースで、潜む男の存在とその正体に気付き始めるのですが、このまま静かに死んでいきたいと思っていた女性と、人生に何の希望も見出せない男性の利害は奇妙に一致し、おかしな同居生活がはじまります。
ミステリーホラーと見せかけた、恋愛小説のような気がしますね。
あれこれ書くと、小説のトリックや、展開までバレてしまうので書けないんですが、悲劇的な結末じゃなくて良かったです。
こういう小説書ける人、うらやましい。
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