カベにミミアリ商事のメアリーと申します
森村誠一さんの「壁の目」というのを読みました。
実は某本(エッセイ的な本)で、森村さんの文章を目にしたとき、「うわー、読みやすくてわかりやすいー」と思って、機会があれば、どれか読もうと思っていたのでした。
かと言って、「人間の証明」とか「野生の証明」とか、気後れがしてナカナカ手が出ません。というわけで、「壁の目」です。
あらすじ【壁の目】
若いころ、もののはずみで殺人を犯してしまった男は、数年後、素質があったのか偶然か、作家としてデビュー(なお当時の事件はほぼ迷宮入りのもよう)。デビュー後、何を書いても売れた。自分で一万円札を印刷しているかのような錯覚に襲われた。文壇の寵児と恐れられた。そして当然の流れとして、とある新人賞の審査員になった。さて送られてきた受賞候補作を読んでみると、かつて自分が犯した殺人劇を正確に描写したものだった。偶然? 見られてたの? これ、賞を取らせていいの?
面白かったですよ。面白かったです。ミステリー小説は、こういう「え!なんで?」というのを早めに提示しておいて、その引力で引っ張るしかないんだなあと思わせる作品でした。
このあらすじを見て、まさか連続殺人事件につながっていくと、誰も思わないでしょうよ。
ちなみに、男が小説新人賞の審査員になってからの心象にこんなのがあります。
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最近は文学賞の賞金も引き上げられ、文学志望者だけでなく、懸賞金目当てに応募してくる者が増えている。
彼らは自分の職業体験や異常な経験(と自認している)や事件を後生大事に抱え込んでいて、それを作品化してくる。
文学的才能があるわけでもなく、これを書かなければ生まれてきた甲斐がないというほどの思い込みもない。
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要約すると、「『凄い経験をもとに書いた。どうだ』と言いたいんだろうけど、そんなでもないよ」ってことです。
痛い痛い。耳に痛いじゃないですか。何もそんなにまで言わなくても。
勉強になります。策士、策におぼれないことですね。謙虚な姿勢を大事にしたいと思います。
次は松本清張さんのあの怪作を読みます。
古い名作読んでていつも思うんですけど、読みやすいですね。これにつきます。複雑で韜晦趣味的で衒学的な文章なんて、まず無い(←この文章がもうダメw)
参考になります。
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