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2011年9月20日 (火)

人参果の数を数えながらお読みください

とりあえず、気ままなひとりごとのつもりではじめた西遊記読んでまえシリーズですが、以外と好評頂いておりまして、ありがたいことでございます。西遊記の面白さをすこしでも広めていくことができれば、本望ですが、それ以前に自分が楽しんで書きたいと思います。

あと、なるべくダラダラと引っ張らないよう、気をつけたいなと。

西遊記をぼんやりしか知らないヒトでも「赤子の形の果実・人参果」あたりはご存知なんじゃないかと思います。たぶん、前回の黄風大王なんかよりはメジャーエピソードのはず。しかし実際のところ、全米が泣いたとか、全米が震撼とか、そんな大層なお話でもありませんので、サクサク行きます。

第二十四回
万寿山にて大仙 故友を留めること
五荘観にて行者 人参を窃ねること

ここは万寿山、五荘観。
エライエライおじさん鎮元大仙は天界の住人も一目置く人物。金蝉子(三蔵の前世)とも知り合い。
どうも自分が留守にしている間に、三蔵一行がこのあたりを通過するらしい。
鎮元大仙「弟子Aに弟子Bよ、わしの留守の間に三蔵という僧侶が来たら、丁重に扱え。人参果を2個差し上げろ」
弟子AB「はーい」

言いつけどおり、やって来た三蔵に人参果を2個出すが、見た目が「リアル生後3日の赤ん坊」で、三蔵は食欲が萎える。
三蔵「こ、こんなカニバリズム・・・も、もう下げてください」
弟子A「いや、人肉じゃないですって。これは三千年に一度、花が咲き、三千年に一度、30個実がなり、三千年で熟す貴重な果実です。ぜひお召し上がりを」
三蔵「ムリ!オエェー・・・」

客は食べないし、人参果は日持ちしないしで、やむなく弟子二人で奥に下がって人参果を一つずつ食べた。
これを物陰から見ていた八戒は、悟空&悟浄を呼びつけ顛末を話す。
木の実と聞いて、サル大王が反応しないはずがない。
悟空「よし、おれが3つ、もいできてやるよ」
最初の1個を地面に落としてしまい、土に消えて(そういう性質の果実)しまったが、慎重に次の3個をもいで三人で1個ずつ食べてあとは知らぬ顔。

鎮元大仙の弟子たちは、人参果を叩き落すときに使う棒が倒れているのを見て、すかさず木のもとへ。どう勘定しても数が足りない。

弟子A「やい、三蔵!果実を取っただろう!」
三蔵「いや、知らないし。あんなのムリだし。てか思い出したらオエェェー・・・」
弟子B「じゃあ、お前の弟子が盗んだんだ!呼びつけて尋問しろ!」
三蔵「ウェップ・・・呼びますよ呼びますよ、オーイ悟空たちよォエェェェー・・・」

どうする三人!

 

第二十五回
鎮元仙 取経僧をば追捕すること
孫行者 五荘観にて大アバレすること

※たまにサブタイがカタカナの時は、正常表示される漢字が無いときと思ってください。

三蔵と鎮元大仙の弟子の前に呼び出された悟空八戒悟浄は最初、

「なんのことやらお奉行様」

とシラを切りまくっていたが、あまりの痛罵面罵に耐えかねた悟空、そっと身代わり人形を置いて、人参果の木のもとへ行くと、腹立ちまぎれに棒で根こそぎ打ち倒す。

一方弟子AB、口汚く罵っているのにもかかわらず、悟空があまりにも人形みたいに涼しい顔なので、もしかして自分達の数え間違いか?と不安になり木のもとへ確認に。

人参果の木、横倒し!ガチ枯れ!

弟子ABは怒りと恐れのあまりヒザを震わせながらも、作り笑顔で一行を晩御飯に誘い、食堂を四方から施錠して鎮元大仙の帰りを待って就寝。

閉じ込められた三蔵一行は悟空の術でたちどころに開錠して夜逃げ!
翌朝帰ってきて詳細を聞いた鎮元大仙、怒りもろともひと飛びに三蔵一行を追いかけて、『袖を広げて捕獲する術』で馬もろともザバーと掬い取り五荘観へ。

縛り転がされた一行を前にして、鎮元大仙の号令。
鎮元「三蔵をムチで打て」
悟空「それはおかしい。盗んだのは俺だから、まず俺を打て」

今更あれこれと経緯を書きませんが、悪魔将軍かゴールドセイント並みに体の頑丈な悟空にムチ打ちが効くはずがありません。

鎮元「次は三蔵をムチで打て」
悟空「それはおかしい。喰ったのは俺だから、まず俺を打て」

先述の如く、悟空は涼しい顔。

鎮元「こいつを釜茹でにしろ」

大釜がグラグラと煮立たせられます。
悟空は庭にあった沖縄のシーサーみたいな石像を自分の姿に変え瞬時にすり替わり、自分は姿を小さくして高見の見物。

弟子たち「こ、この小猿さん、重いなあ!石像を持ち上げてるみたいだ・・・

苦労して釜に放り込むと釜は割れ、中からこんにちは石像。

怒りも度が過ぎてもはやキレ笑いの鎮元大仙
「もうwwwわかったwwwお前の師匠思いに免じて条件つきで許してやる。木を元通りにしてくれ。3日待つ」

このエピソードは割りと好きです。後の虎力大仙、羊力大仙、鹿力大仙との技比べに通じる面白さ。

 

第二十六回
孫悟空 三島にて方を求めること
観世音 甘泉もて樹を活かすこと

枯れた木を生き返らせる方法を求めて悟空は三神山をまわることに。

まず蓬莱山の、福星、祿星、寿星のところへ。
福星「なにしにきたーん?今碁を打っとるのよ。天竺行ってるんじゃないの?」
悟空「いや、天竺へ行ってるんだけど、途中でつい人参果の木を殴り倒して、元に戻さなきゃならない」
福星「ヒドイwww大聖、相変わらずヒドイことをサラッと言うねー。我々は、獣や虫を生き返らせるのは出来るかもしれんけど、あの仙木はムリだよー」
悟空「わかった。じゃ他当たるよ」
福星「お茶飲んでいかないのー?」
悟空「いいよ、時間無いよ!」

 

お次、方丈の仙山、東華大帝。
大帝「あれ?天竺へ行ってる最中て思ったけど、なんでこんなとこまで?」
悟空「いや、実は人参果の木を殴り倒・・・
大帝「工工エエエエ(´Д`)エエエエ工工」
悟空「あのね、行きがかり上、そんな事になってね」
大帝「やることがムチャクチャ過ぎ!ここにある『九転太乙還丹』は、人間ならなんとかなるけど、あの仙木はムリィー」
悟空「アリガト、サヨナラ!」
大帝「待って、待って、特製玉液ジュース飲んでいかない?甘いよ」
悟空「ゴメン!急ぐんで」

 

三神山最後、瀛州の九老仙のもとへ。
九仙「いやームリよー。無いよー」
悟空「わかった。ではこれにて」
九仙「むむ!・・・ちと待たれよ大聖!」
悟空「なんと!ありましたか!」
九仙「お茶と菓子があるよ」
悟空「さいならーー!」

 

※今回のエピソードに限らず、悟空は基本、行く先々でお茶と茶菓子と、時にはご飯を進められます。これ、けして私が冗談半分に話を盛っているわけでなく、原文にほぼ忠実に書いてます。そういう積み重ねのギャグなんでしょうか、それとも当時の人の客のもてなし感として必ず一筆いれておく礼儀なんでしょうか。真意は不明ですが、悟空の「いろんな神々から好かれてる感」が垣間見えて、少しほほえましいエピソードです。

さて八方ふさがりの悟空は、仕方なく観音のもとへ。
落伽山に足を踏み入れると、「錦襴の袈裟泥棒にして黒大王にして黒クマ妖怪改め守山大神」に呼び止められる。
守山大神「こら悟空、どこへ行く!」
悟空「てめえ、この間拾った命をここで捨てさせてやろうか」
守山大神「マアマア悟空さん、そういきり立たないで、懐かしくてつい軽口なんですよ。観音様に会いに来たんでしょ?案内しますよ」
観音は黒クマに「よーしよしよし」と角砂糖を食わせながら(←盛りました)悟空を一瞥。
観音「ナニ?」
悟空「じつはこれこれで」

(観音の小言省略)

観音「そうねえ。昔、太上老君との賭けで私が大勝ちしたとき、怒った老君が私の柳の枝を八卦炉でガンガン焼いて、コゲコゲになったんだけど、甘露水の入った浄瓶に差してたら緑に戻ったんで、これなら行けるかもよ」
悟空「(あんたらナニやってんの・・・)」

※これも言わせてください、けして私が話を盛ってるわけではありません^^

端折りますが、甘露水で木は元通り、鎮元大仙とも仲直りして一行は無事旅を再開。

ところで人参果のエピソードがスタートするのが第24回。
気付きました?
9千年ぶりに熟して食べごろの実が30個
最初三蔵に出して断られて弟子が食べたのが2個
悟空が取り損ねたのが1個。次に取ったのが3個

30-2-1-3=24

悟空に殴り倒されるまでの実の残高は24個です。エピソードスタートは第24回じゃないとダメなんです。

だから全100回の西遊記を読んだほうが、より楽しめるんです。

 

第二十七回
屍魔 三たび唐三蔵を戯うこと
聖僧 恨んで美猴王を逐ること

人参果と黄袍怪に挟まれた、第二十七回、1回こっきりで終わってしまう白骨夫人のエピソードですが、悟空をメンバーから外して次の黄袍怪につなぐという割と重要な役目を負ってます。

白虎嶺という踏破には険しい人外魔境(←すこしおおげさ)に差し掛かった三蔵一行に唐僧の肉を喰いたくて仕方がない白骨夫人が、「ピチピチ若妻」、「若妻の母と名乗るにはどうみても高齢出産すぎる老婆」、「老婆の夫と名乗る老人」に化け3度近づいてくるが、火眼金睛の悟空を騙せるはずもない。
娘と老婆の時は棒で殴り殺される寸前で別な死体をおいて逃げおおせたが、老人のときについに棒をくらってオダブツ。
しかしボンクラの三蔵、八戒、悟浄の目には、悟空が一般人を3人撲殺したようにしか見えない。
痛罵され、破門状まで書かれて放逐された悟空は、花果山に戻るしかなかった。
○冗談か本気か、悟空を悪人扱いの八戒→「行動より言葉の人」
○何も言わない悟浄→「行動も言葉も無い人」
○八戒の言うことしか信じない三蔵→「自分に耳ざわりのいい言葉しか信じない人」
○言葉が足りない悟空→「言葉より行動の人」

1回こっきりのお話ですが、これほど読んでて胸が悪くなるエピソードもなかなかないです。

この話に観音をはじめとする天界の住人が一切絡んでこないのも不思議ですが、まぁ誰か来たらうまく取り成してくれて破門イベントが消えちゃうから、作者的には入れようがなかったんでしょう。
観音は観音で宝蓮池の金魚に向かって「これも試練だよね」て言ってるかもしれないし。

そんなわけで、一人減った一行は、「読み返すと意外と複雑な次の第28回~31回のエピソード」へ。

第28回から始まるのには意味があります。

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