「おそろし」や「あんじゅう」よりもっとヤバイ魔物が続々登場
宮部みゆきさんの「ばんば憑き」を読み終えました。
5本の中長編からなる時代物です。過去の作品からのスピンオフもちらほら。
結構なボリュームの本でしたが、宮部さんの作品ですので、読み始めたら止まりません。
サーって読んじゃった。
あらすじ【ばんば憑き】
☆坊主の壷
古い掛け軸に描かれた絵は凡人にはただの壷の絵にしか見えないが、特定の人間には壷にミッシリはまった坊主も見えるという。
坊主が見える人間は人助けの特殊能力を得るとともに、厄介事まで手に入れてしまう。
☆お文の影
読むのに多大なエネルギーを要する悲しいお話。
引退した回向院の茂七親分から諸々を引き継いだ、押し出しの強いコワモテ十手持ち政五郎親分の初主役物語。人間オーディオ・レコーダー略しておでこさんも健在!
☆博打眼
黒い巨体に50の目を持つ汚らわしい謂れの妖怪博打眼VS50体の張子の犬のおもちゃたち。
酷悪魔獣VSゆるキャラの激しいバトルが!!
☆討債鬼
貸したものを取り立て損ねて死んだ債権者が債務者の子となって蘇る、子供の姿をした討債鬼。
あんじゅう 三島屋変調百物語事続にて「黒い魔物」の話をおちかさんに話して聞かせた深考塾の若先生・青野利一郎のスピンオフストーリー。
いまひとつ腕に覚えなしの若侍・利一郎にもやはり悲しい過去があった。若先生の過去話と、討債鬼征伐というふたつのお話が同時に読めるお得作品。
☆ばんば憑き
湯治旅の若夫婦の旦那が相部屋となった老女から聞かされる、恐ろしい「ばんば憑き」の儀式。閉村の「家名を守る」という名の妖怪に魅入られた3人の男女のお話。これは怖い。
☆野槌の墓
読むのに多大なエネルギーを要する悲しいお話2。
父一人娘一人、つましく傘貼りで生計をたてて暮らす貧乏侍・柳井源五郎右衛門に、化け猫から妖怪退治の依頼が入る。妖怪の正体由来を聞くに着け、源五郎右衛門は殺すのではなく、救う方法がないかを考え始めるが・・・
ほのぼのした文体に騙されて読み続けていくと突然心をちぎられるような展開に驚くハード作品。
「お文の影」のおでこさんあいかわらず可愛らしいですね。取り扱う事件が小さな子供に対して極悪すぎて
おでこ「ここからは話すのがつらいです」
政五郎「(私だって聞くのはつらい)」
的なやりとりが健気です。
今作中では、「討債鬼」のお話が好きです。「あんじゅう」の時から読み書き塾の若先生は私の中でずっと俳優のエイタさんで再生されてます。今回もそのキャラ設定でいっさいブレてませんでした。飄々とした若先生なのに、あんな暗黒な過去を飲み込んで生きてたとは、あんじゅうの時には思いもしませんでした。若先生の過去話は「火車」を読んだとき以上の黒い衝撃&やり場のない怒り!討債鬼の話で少しは救われるところがあっただろうか・・・
「博打眼」もいいですね。
50人の人間に「あんなことやこんなこと(←作中ですら明確に描写できないほどのグロテスク製法)」をして作り出される人造妖怪博打眼が鳥肌立つほどヤバイのに、それを征伐するのが、50体の張子の犬のおもちゃというのが脱力系で安心させてくれます。
物理的に無理な相談かもしれませんが、宮部さんはこのボリュームの中編をガリガリ書いてほしいです。ほんとはおちかさんの百物語に入れても大丈夫な5本の妖し話ですが、あの「聞き手スタイル」で書き続けていくのは骨が折れるのかもしれません。
もう開き直って話を聞いたあとにおちかさんが記述してるスタイルにすれば、宮部さん自身がおちかの人格を借りて書けばいいだけなので、いいなあと思わないでもないですが、百物語は様々な人があの部屋におとずれ語り捨てで去っていくスタイルじゃないと面白くないか^^;
あんじゅうを読んでない人は先にあんじゅうを読むのがオススメ。
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コメント
おでこさんの正式名称、初めて知りました。
確か以前にもアサリバター略して~とかありましたねw
どっから出てくるんですかその発想(*^m^)
私はやっぱり壺の話好きですねぇ。あんまりドロドロしてなくて最後にちょっとほんわか。気持ちよく読めました。
投稿: 夏侯 | 2011年4月 6日 (水) 22時08分
夏侯さんコンバンハ!
本当は
『オ』ーディオ
ハード『デ』ィスク
レ『コ』ーダー
にしようかと思ったんですが、クドイんでやめときましたw
野槌の墓も重いですがなかなかじんわり読ませます。
今回はいい作品5本そろったってイメージですねえ。
投稿: 早瀬五郎 | 2011年4月 7日 (木) 20時43分