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2010年3月23日 (火)

誰が何を模倣したか?

模倣犯上・下巻あざやかに読み終えました。
以下、主観論者が青くなって逃げ出すような主観に満ちた文章ですし、まちがいなくネタバレしますので、そういうのダメナノという方は読まないでください。
ココログの「続きを読む」機構は、記事選択で読んでしまうと隠す事無く堂々と全文表示してしまいますので、そういう経路で来た方で、やはりネタバレ・ダメ・ゼッタイという人はここで読むのをやめてください。

一応、言い訳を置いておきます。物語は「えー?実は犯人はこの人だったの?」というような物語ではなく、主犯や真犯人はわりと早い段階で判明してますし、あの○○ップのナカイさんの映画も有名ですので、犯人が誰か?というネタバレインパクトは薄いと思います。
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それよりなにより、一番のネタバレインパクトは「なぜ模倣犯というタイトルなのか?」というところだと思います。
これは全1400ページ強の残り50ページくらいにならないと判明しません。
あれは夜中に唸った!

続きを読む以降はホントにネタバレオンパレード。閲覧ご注意ください。

 

 

 

さて、

あらすじ【模倣犯】
若い女性ばかりを監禁殺害し、被害者家族、テレビ局を相手取り嘲笑を続けたふたりの犯人は、新たな遺体を運ぶ最中交通事故死してしまう。そのふたり栗橋浩美と高井和明、特に高井和明の家族はマスコミ、一般人から激しい糾弾を受ける。しかしその時ふたりの同級生と名乗る網川浩一という男が現れ、「高井和明は無実。栗橋浩美すら操られていたに過ぎず、主犯は別にいる」との説を掲げ、マスコミに華々しく登場してきた。

※あらすじは若干作為的です。

参考「見たこと無いんですが評判すこぶる悪いし、あまり映像で見たくないなあと個人的に思っている映画版の配役」
栗橋浩美:OREジャーナル編集長
高井和明:乙葉・夫
網川浩一:ナカイさん

この物語は宮部さんの作品の中でも最大長編に入る部類で、どの人物が主役とは言いがたい群像劇になってます。
主な登場人物だけでも30人は軽く越すんじゃないでしょうか。
それでも厳選していくとだいたい下記5人のお話なのかな・・・と。

ルポライター前畑滋子の物語
被害者家族のひとり有馬義男の物語
第一発見者塚田真一の物語
犯人と言われた栗橋浩美、高井和明の物語

読む人それぞれによってどの人が主役!と思えるかは様々ですが、私は「塚田真一の物語である」と断定して読み進めました。
長い長い胸がムカムカする物語なのですが、真一君と久美ちゃんの物語は少しだけホッとできる。いや真一君に感情移入して読んでるので、水野久美の優しさと献身に救われるのかもしれない。
栗橋浩美も主役として充分なんですが、退場が早いのが惜しい。
特に下巻始まってすぐの、自らのトラウマにより精神が崩壊を始める栗橋浩美を命がけで説得し立ち直らせようとする高井和明のやりとりが圧巻で、読んでいてページを繰る手がもどかしいほどです。
どうやっても許されない非道な事件を起こした栗橋浩美ですが、自業自得とも言えるその最期はあまりにも哀れでした。

そのあとで出てくる網川浩一という薄っぺらい男には何も感じない(と読者に思わせる宮部さんのコントロールなのですが)。

口先で大衆を操ろうとした真犯人の計画には思った以上にアラがあり、「アジトの発覚」「目撃者の登場」「通話記録の残った携帯電話の発見」「ボイスチェンジャーで声紋まで誤魔化せると思っていた認識の甘さ」「警察のローラー作戦への認識の甘さ」など、これでもかと言うほど宮部さんは真犯人の愚かさを描写していきます。

そこが全体を通して良いところなど一つも無かった事件の中でかろうじて「ああ良かった」と思える部分でしょうか。

以下色々な事情を差っ引いての独断ですが・・・

前畑滋子の後手後手ぶりにはムカついてしょうがない!最後の「真犯人を崩壊させる痛罵」でやっとプラマイゼロくらい。
高井由美子のダメぶりにもムカついてしょうがない!この人は栗橋に恋心を抱き愚鈍な兄高井和明を疎ましく思っていた子供の頃から、兄の無実を主張し始め、最終的に自ら進んで破滅していき退場するまで腹が立ってしかたがない。兄の正義と愛はアンタにはみじんも無いのかと言いたい。
まあ、作品中一番許せないのは栗橋浩美の母親なんですが。

有馬義男さんがんばってください。
真一君エライ!よく言った!
篠崎さん、がんばれ!
建築家さん(本名わからず)素直にスゲェ。感動する。

と、まあ、そんな物語でした。

宮部みゆきさんの「楽園」がこの模倣犯の何年か後の前畑滋子の物語らしいですが、読みたいような、どうでもいいような(苦笑)。

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