クリスティーさんの作品、色々読んできましたが、探偵としてはトミー&タペンスが一番好きです。作品で選ぶとまた話は別ですが。
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かもねぎさんから『クリスティー作の中で有名ではない名作ではコレがオススメですよ』と教えていただいた「ねじれた家」を読み終わりました。
大変面白く、また最後までドキドキしながら読めました。
特定の探偵さんは登場しません。主人公は素人探偵チャールズ・ヘイワード。
小説のタイトルはクリスティーさんお得意のマザーグースの歌からとられてます。歌の内容とストーリー進行は直接関係無いですが、殺された大金持ちの住む屋敷が「ねじれた家」であると、劇中の登場人物によって何度か会話されます。物理的にねじれているわけではなく、住んでいる家族の心がねじれているとか、被害者の考え方がねじれているとか、家族それぞれがねじれてもつれて抜け出せない家とか、そういった意味合いです。
今回嬉しいことに、クリスティー作品読み始めてほぼ初めて犯人を当てることが出来ました!主人公チャールズの父の助言がありがたかった!
※途中で犯人がわかったからといって、魅力が減るわけではありません。
残虐な犯人が迎えるあまりにも哀れな結末に関しても、クリスティーさんの優しさが注がれていて、読んでいて嫌な気分にはさせられませんでした。
あらすじ【ねじれた家】
チャールズは恋人ソフィアに求婚するが、間をおかずソフィアの祖父アリスタイド・レオニデスが毒殺されてしまう。
「事件を速やかに解決する」⇒「ソフィアと円満に結婚できる」
と考えるチャールズは、父であるロンドン警視庁副総監の助言を参考に担当のタヴァナー警部と事件解決に乗り出すが、残酷な犯人は次々と関係者を殺害していく。
作品自体が特殊な「そして誰もいなくなった」を除くとして、いつもたいてい一人くらいしか被害者の出ないクリスティー作品のなかでは多殺の方です。
2人毒殺、2人事故死というハイスコア(言い方不謹慎!)。
あと、今回も痛烈に感じたのは「クリスティー劇団」であるなあ・・・ということ。
手塚治虫さんのスターシステムやM-1の麒麟枠という命名のように、「この枠の人はこういうキャラ設定」というのがほぼ固まってます。
今作は特に登場人物の相関図、被害者と劇中で取り扱われる容疑者群の位置関係が「スタイルズ荘の怪事件」と酷似しているのに、まったく異なるストーリー展開になります。おそるべし。
今までに散見された登場人物のまとめ
(主観バリバリです。異論は認めるところであります。作中の善悪を度外視して分類しております。)
【老主人枠】
まず毒殺される。遺産は莫大。頑固。孫の誰かを溺愛している。
【長男枠】
堂々とした体格。事業を受け継いだ2代目。経営破綻で遺産が欲しい。クリスティー初読の人からまず疑われる。「五匹の子豚」ではめずらしく弟がこの枠。
【次男枠】
神経質、内向的、腺病質。小説を書いたり、脚本を書いたりと演劇面に詳しい。薬等のトリビア知識もなかなか。次に疑われる人。
フタを明けてみると実はいい人だったこともまれにある。「五匹の子豚」ではめずらしく兄がこの枠。
ひらいたトランプの医者は長男枠と次男枠を足して2で割った感じ。
【未亡人枠】
老主人の若い再婚相手。美人。どんなミステリー小説素人でもまず避けて通るが、劇中の警察や素人探偵に徹底的にマークされる。殺害される主人が女主人の場合は当然この枠は男。
【女優枠】
え?女優枠?と思われるかもしれませんが、クリスティーさんの小説読んでいて、出てこないと不思議に思うほど、必ずいます。
別人を演じていたり、常に芝居がかっていたりして本心が読みにくいこともあり、各探偵と読者を悩ませる危険枠。
作品により未亡人枠や長男の嫁、次男の嫁枠と統合される。
【警察枠】
色々出てきますが、ジャップさんとバトルさんがキャラが立っているくらいで、それ以外は基本的に誤認逮捕。
「そして誰もいなくなった」のブロア、「オリエント急行の殺人」のハードマンなど、外見の造形的には間違いなくこの枠。
【ヘイスティングズ枠】
ひたすら女性に弱い。困っている女性を見捨てられない。勢い余って求婚するが、いなされる率200%。推理においても恋愛においても読者からニヤニヤされる。ポアロマープルがいない作品の素人探偵。「殺人は容易だ」のルーク、「ねじれた家」のチャールズなど、該当者多数。ヘボ探偵。ただ、ヘイスティングズだけは、無意識の発言がポアロに天啓とも言える最大のヒントをあたえる。
愛すべきモナミ。
【マーストン枠】
「そして誰もいなくなった」で最初の犠牲者であるトニー・マーストン。美男子で、行動力もあり、危険な匂いも漂わせる自信家。一筋縄ではいかない若者。「動く指」のジェリー、「オリエント急行の殺人」のマックイーン、「終わりなき夜に生まれつく」のマイク・ロジャースなどがこの枠。「バートラム・ホテルにて」のマリノスキーはこの枠にしようか後述のロンバート枠にしようか悩むところ。
【ロンバート枠(冒険家枠)】
「そして誰もいなくなった」でかなりいい活躍をするも命を落とす冒険家ロンバート。野性味があり、行動力判断力に優れ、読者に安心感を与える。ポアロマープルがいない作品の素人探偵その2。トミー&タペンスのトミーはこの枠でいいはずだが、出演作品がロングスパンなのでやがて老人枠へ移行。
【美人枠(もしくは令嬢枠)】
とにかくあらゆる作品のヒロイン。頭がいい。だいたい家庭教師か令嬢。頭が良すぎてたまに「深読み読者」から疑われる。危険の真っ只中にいる。ヘイスティングズが(以下略)。トミー&タペンスのタペンスはこの枠でいいはずだが、出演作品がロングスパンなのでやがて老人枠へ移行。
【少女枠】
頭がいい。「五匹の子豚(事件当時)」、「ねじれた家」、「白昼の悪魔」、「動く指」など、該当者多数。鍵を握っているような、いないような・・・
【老人枠】
老人枠て失礼な言い方ですね。男女問わず博識。読者が読み飛ばしている大事な情報を聞き逃さない。料理、マナーにうるさい。女性は編み物好き。
ポワロ、マープルなどもこの枠。「そして誰もいなくなった」のウォーグレイブ判事もこの枠。いかなる理由があろうとも、罪を犯した人間を許さない。
【迷惑枠別名「肩越しの視線」枠】
悪意が無いのに他人に甚大な被害を及ぼす人。たいてい自業自得ともいえる死を迎える。悪意が無いからタチが悪い。読者に「おしゃべりな人は嫌われるし、秘密を隠して生きてきた人に殺されるなあ」と思わせる枠だが終盤にならないと発言のどの部分がまずかったのかは判明しない。この枠が被害者の作品は無名だが光る。
【メイド枠】
とにかく名前がグラディス。
分類してみると以外といました。しかし、上記の特徴を備えた俳優女優が15人もいれば、全作品に対応できますよ。おそらく。
吉本新喜劇みたいで、楽しそうな舞台ですね、クリスティー劇団。
「アクロイド殺し」がどうしても上演できません。
・・・いや、開き直って原作に忠実に「アクロイド殺し」を舞台や映画化してみるのはどうだろう・・・
ダメだな!
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