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2009年6月 4日 (木)

疑われない犯人とは?

クリスティーさんの「暗い抱擁」「殺人は容易だ」の2本を読みました。
随分前に読了していたのですが、何せ時間がなかったもので、記事にする間がありませんでした。

「殺人は容易だ」はポアロもマープルも出てこないノン探偵物。「暗い抱擁」に到っては、ミステリ小説ですらありません。

ミステリ小説を書きまくっていたある一時期、クリスティーさんが「メアリ・ウェストマコット」という変名を使って書いた恋愛小説6本のうちの1本です。

名前を変えた理由は「アガサ・クリスティー」という名前で恋愛小説を書いても、読んでいる側は、
「さてそろそろ殺人が起きるんだろう?」
とか、劇中何の含みもない自然死があったとしても、
「キタ!さあ、一番怪しくないのはどいつヨ?」
などと勘ぐってしまいがち。それををさせないための変名だそうです。

少年マンガに連載する女性作家が男名前をつかったり、少女マンガを描く男性作家がどっちともとれるような可愛らしい名前を使ったりするのと似てますか?・・・ちょっと違いますか?・・・

さてその「暗い抱擁」ですが、やはり恋愛小説ですからね。読む人を選びますね。

あらすじ【暗い抱擁】
ヒュー・ノリーズはかつて思いをよせたイザベラの恋敵ゲイブリエルのいまわの際によばれ、あることを告げられる。この物語はその言葉を聞いたノリーズが記す物語である。ゲイブリエルが言い遺した言葉とは?

う~~~ん。
読む人によって、捉え方が変わる作品の代表ですね。良いと思う人には良作なんでしょうが、う~~ん、読む人を選びますね。
私の超主観ですが、「オチで滑った」という気がします。いや、思ったほど伏線が効かなかったというべきか。
主人公ヒュー・ノリーズに好感が持てるか持てないかで評価が変わる作品のように思います(ま、あたりまえか)。
読んでて面白いとは思います。「時間を無駄にした」という感じは受けません。

このシリーズ、あと5本ほどありますが、注意深く選ぼう・・・

で、お次は「殺人は容易だ」です。一般人(元警官)が右往左往しながら謎を解くという筋立て。

あらすじ【殺人は容易だ】
元警官のルークは田舎に帰る列車内で、「自分の村で連続殺人が行われており、犯人の見当もついたので、それをロンドン警察に訴えにいく」と話す老婦人に出会う。
適当に相槌を打ってわかれたルークは翌朝の朝刊でその老婦人の輪禍の記事を見つける。そして老婦人が次の犠牲者と予言した医師も亡くなってしまう。
「殺人は容易だ。けして誰にも疑われなければ・・・」
老婦人の言い遺した「けして疑われることのない人物」とは?

ヨッシャアアア!

普通に面白いです。「どの作品」と言うと思い切りネタバレしてしまうので、言いませんが、後年のミステリ小説へ影響を与えているギミックです。
なので目新しさは無いです(クリスティーさんの方が先発なので失礼な言い方です)が、充分楽しめる展開。
後半で次々変わっていく犯人候補。
ミステリ小説はこうでないといけない。

ポアロやマープルさんのような手練手管では無いので、ルークの推理はムラだらけで、読み手をミスリードさせるのに上手く機能しております。

♪♪♪♪♪

ポアロ、マープルから久しく離れていたので、今読んでいるのはポアロ物の「マギンティ夫人は死んだ」です。
事件現場に乗り込み、安ホテルの不味い料理に悩まされながら東奔西走する姿が、いつものポアロさんらしくなくて笑えます。

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