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2009年5月 7日 (木)

ノックスの10回クイズvol.2

タペンス「ねぇトミー、密室て10回言ってみて」

トミー「密室密室密室密室密室・・・」

タペンス「今、ページワンって言わなかったから5枚取ってね」

トミー「ゲームが変わっとる!」

どうでもいい開幕ですみません。
クリスティーさんの「おしどり探偵」「親指のうずき」を読みました。

※ネタバレダメ!な人は読み飛ばしてくださいね。

あの有名すぎるほど有名なポアロマープルという2大名探偵を持ちキャラにしながら、さらにクリスティーさんが作り出した第3の探偵、夫婦探偵トミー&タペンスが活躍する2作品です。

トミー→正解をじっと熟考の上、最後にズバーっと披露する王道探偵
タペンス→一見無関係な雑多な情報からトミーより先に正解に近づいていく行動派探偵

あらすじ【おしどり探偵】
15編の短編集です。
トミーの所属する諜報機関の上の方からの依頼で探偵事務所を開くことになったトミーとタペンスは、古今東西の探偵(ホームズやポアロ)を模倣しながら、難事件を次々解決。いくつかの事件の背後で見え隠れする16号の男とは?・・・

1編30ページ程度のいい具合に力の抜けた短編集です。ズコーッて言う腰砕けのトリックからわりと本格的な事件まで、色んな種類のお話が詰まってますが、謎解きの面白さよりも、ふたりの会話を楽しむ作品だと思います。
探偵事務所のドアボーイ(受付?)アルバート青年の変な活躍も見所。

あらすじ【親指のうずき】
自分達の大叔母が身を寄せる老人ホームを訪れたトミーとタペンスは、あやしい言動の老婆と知り合いになるが、その老婆は所持品である1枚の風景画を残して姿を消す。
風景画の景色に見覚えのあるタペンスはトミーが秘密機関の会合に出席していて不在の間の暇つぶしに風景画の景色と同じ場所を苦心の末探し出すが、夕闇の墓地で何者かに後ろから殴打され、その場に倒れる。
トミーと旧友アイヴァー・スミスがその風景画の土地にまつわる巨大な組織的犯罪を暴き立てる中、回復したタペンスは小さく残忍な殺人鬼と対峙する。

クリスティーさんの持ちキャラである各探偵は執筆時期に合わせて同じ年月、歳を重ねているのですが、ポアロもマープルもデビュー作の時点で若く無いので老け具合がそれほど目立ちません(蛇足ですが、金田一さんも20代~40代と作中徐々に老けていますが、彼ももともと若さが無かったので目立ちません)。
しかしトミーとタペンンスのふたりはデビュー作「秘密機関(1922年)」でそれぞれ22歳。「おしどり探偵(1929年)」でも29歳と若かったのに、「親指のうずき」は1968年執筆でふたりの年齢も60代後半!
当小説冒頭、老人ホームに叔母を訪ねた際、係員に「ご入居ですか?」って聞かれてるのが可笑しい。
シリーズの中でキャラが老けるというのはあまり体感したことが無かったので、このシリーズは読んでいてなかなか面白いです。そうちょうどジョジョの2部主人公ジョセフを見るような感じ。
初登場時15歳の少年で、いつも飴ちゃんを舐めていた青年アルバートも、親指のうずきでは老召使になっていて、いやに落ち着いていて少し寂しい感じ(いや、非常にアルバートらしい活躍を見せてくれるので登場してくれるだけでも嬉しいのですが)。

まあ、そのキャラの老け具合の面白さは物語の本質では無いので、差し引いたとして、それでもこの親指のうずきは面白いです。

前半は「タペンスの見覚えある景色探し」に終始しており、いつになったら事件がはじまるのか読み手は気を揉むのですが、その運命の地で何者かに後ろから殴り倒されて生死不明のまま場面転換、帰りの遅いタペンスを心配するトミーとアルバートの捜査開始からラストまでイッキに読ませるスピード感。そしてラスト付近でついに現れる殺人鬼。

この小説は面白い。

惜しいのはトミーとタペンスの登場作品が少なすぎること。
短編が「おしどり探偵」のみ、長編も「秘密機関」「NかMか」「親指のうずき」「運命の裏木戸」の4本しかありません。
もったいないんで、少し間隔をあけて読むことにします。

ただ今造形の合間に読んでいるのはやはりクリスティーさんの「暗い抱擁」
特定の探偵がいないどころか、実はジャンルさえもこれまでとは異なる小説だったりします!

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