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2009年3月24日 (火)

ウィリアム・ブレイクのハエ

クリスティーさんの「終りなき夜に生れつく」を読みました。
ポアロもマープルも登場しない、特定の探偵の出てこないミステリー小説です。
※ネタバレしないよう、注意して書いておりますが、勘のスルドイ人は今日の記事タイトルでググってはいけません!

あらすじ【終りなき夜に生れつく】
若く自信に満ちた青年マイク・ロジャースは「ジプシーが丘」と呼ばれる地で森の中から現れたかのような美しい女性エリーと出会った。
運命に導かれたふたりは意気投合し、結婚し、運命の地ジプシーが丘に居を構える。

呪われた地、ジプシーが丘・・・

出自の良くない無学の青年マイクとアメリカの大富豪の令嬢エリーとの結婚は、まわりから祝福されるものではなかった。
元から何も持たなかったマイクには周りの中傷などどうでも良かった。
ただただ輝くばかりのエリーがいてくれるだけで良かった。
しかしある晴れた秋の朝、ジプシーの呪いはエリーの命を奪ってしまう。

呪われた地、ジプシーが丘・・・マイクは改めて、失った愛の大きさを知る。

衝撃的な小説でした。
物語はマイク・ロジャースの「すべてが終わったあとの手記」という形で著されており無学無教養だった青年マイクの平易な言葉で語られ、読む方も構えずに読み進むことができます。
そして驚くべきことに文庫本の分量400ページのうち、300ページあたりまで、何の事件も起きません。
延々と、マイクがエリーと出会ってからジプシーが丘に家を建て、幸せな生活をおくる様子が描写される。
そんな9月の朝、エリーは乗馬、マイクは骨董品市とそれぞれ出かける。
しかし昼食に落ち合う約束だった街のレストランに、エリーは現れなかった。
数時間の捜索の後、林の中で死んでいるエリーが発見される。
落馬による打撲はあるものの、それは致命傷ではなく死因は心臓麻痺だった。
数人の目撃者の証言を統合すると、エリーは乗馬中何か恐ろしいものを見てショック死したらしい。
マイクは考える。これがジプシーの呪いだったのか?

全体を通してミステリー小説という感じは受けません。純愛小説という方が近い気がします。

マイクの記述で何か見落としていることがあるかもしれないと思い、再び頭からササーーっと読み直してみたんですが・・・物語中ほど、幸せいっぱいのエリーがギターを弾いて歌っているシーンが美しすぎて、不覚にもぼくは泣いた。

「そして誰もいなくなった」を引き合いに出すまでもなく、(ポアロ、マープルの出てこない)ノン探偵物には傑作が多い。そう思います。

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