サイコメトラーと努力型ハッカー
宮部みゆきさんの時代小説「震える岩」を読みました。ちょっと厚めの文庫本といった感じ、サクサク読むのに調度良い分量ですね。
いつものごとく宮部さんで時代小説なので、「ぼんくら」「日暮し」「本所深川不思議草紙」同様に捕物帳スタイルになってます。
主人公はサイコメトラー(岡っ引きの妹@16歳)と算額を啓蒙するシロウト算学者(頭デッカチの与力見習い)のふたり。
算額という言葉を今回はじめて知ったのですが、面白いですね。
wikiによると
江戸時代、数学者または数学愛好家が額や絵馬に数学の問題や解法を記して、神社や仏閣に奉納する。
はじめはよりいっそう勉学に励むことを祈念して、解いた絵馬を奉納していたが、やがて人びとの集まる神社仏閣が数学の問題の発表の場となり問題だけを出す者、見つけて解いて解答を奉納する者なども現れる。
数学者が集まるweb上の掲示板のような物が江戸時代にすでにあったことに驚きです。
こんな面白いシステムがあまり時代劇などで取り上げられてないのが不思議ですね。
まあともかくそんな霊能者お初ちゃんと論理派与力見習い右京之介さんのコンビです。
この和製X-ファイルコンビで挑む謎が、
・依り代をどんどん変えて子供を殺害していくネクロマンサー
・田村家下屋敷の、夜になると微かに振動する庭石
・美談に見える100年前の赤穂浪士による吉良邸討ち入りの本当の事情
こういう無関係そうに見える事件がやがて99年前の悲しい事件へつながっていく。
読んでいる最中「赤穂浪士まで混ぜこんでしまって収集つくんだろうか?」と心配したのですが、丁寧に積上げられた各人物描写で、難事件を落とすところに落とし込んでしまいました。スゴイとしか言いようが無い。
お初ちゃんが現場や遺体から断片的な情報を霊視で引き出し、シロウト算学者の右京之介さんが、理論的につなぎ合わせて事件を解いていく。いいバランスになってます。
頭脳労働だけかと思われた右京之介さんですが、100年前の赤穂浪士討ち入り事件の門外不出調書を与力の息子パワーで閲覧し、写本を作って持ち出すあたり、危険なハッカーとしても活躍してくれます。
この時代先取り感!1993年初版の本とは思えないですねえ。
お初ちゃんのサイコメトリーは人知を超えた能力なので、ホンネを言えばどういう風にも話を持っていけるだろうと思いますが、右京之介さんの分析力や情報収集力は「手の届く範囲の能力」だし、最終的に解決していくのはその理論の積上げなので、読んでいて好感が持てます。
今回の事件では上手く機能しませんでしたが、是非不可能事件を算額で解いて欲しい。
もしくは絵馬に書いて奉納して、どこかの誰かが奉納した解答からヒントを得て欲しい。
右京之介「これは○○の方の神社でググって得た解答なんですが・・・」
とかやって欲しい。「ググって」は無理ですが。
というわけで、続編、天狗風を読み始めるわけです。
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