ドタバタ真犯人の大冒険
三津田信三さん著作の「首無の如き祟るもの」を読みました。
四百数十ページと結構なボリュームのミステリ小説です。
※以下、ネタバレしないように書いてますが、ささいなネタバレもダメと言う人は、読まないでください。
また、今日の記事はかなり主観に満ちてますので、広い心でお読みください。
1.閉鎖的な村に対立するふたつの家
2.当主の相続権争い
3.当主候補であるファースト候補が行う儀式の際、
殺されるセカンド候補
4.10年後再び行われる儀式の際、殺されるファースト候補と
その嫁候補
5.その後殺される対立家のサード候補
5.遺体は4人とも首無し
「土着ミステリダイスキー派」の私には申し分無い筋立てなんですけどね。
微妙~・・・
なんだろう、この微妙さ。
や、ちょっとだけ弁護しますけど、
「モノスゲーどんでん返し」
ですよ最後の20ページくらいで。しかもそれを探偵は理路整然と説明します。
「~以上のことから、犯人はAさんなんです」
で、この「モノスゲーどんでん返し」のあと、探偵はその推理のちゃぶ台を、思いっきりひっくり返します。
もう、読んでる私が「バカじゃねえのこの探偵」と思うくらい見事なちゃぶ台返し。
でもそれも探偵は理路整然と説明します。
「~というわけで、真犯人はBと考える方が自然です」
で、読みながら私が、グムーそりゃ確かに・・と思い始めるはしからこの探偵は、もう一回ちゃぶ台をひっくり返します。もう、ちゃぶ台が冥王星まで飛んで行くかの勢いで。
400ページ中の細かな伏線を一つずつ挙げながら。
「~だから本当の真犯人はCさんなんですよ!」
※セリフは私の意訳。
しかし・・・ここからが重要なんですが、上記の探偵が順にあげる3人の犯人は、「ミステリを読んで読んで読みまくった」という人なら、本書読み始めくらいの段階で、
「ああ、こいつが犯人だろうな?」
と直感的に感じられます。
それくらいこの3人は、最初から犯人臭をふりまいてます。
叙述ミステリなんでしょ?
いや、巧妙に隠した変形叙述ミステリなんでしょ?
と色々邪推しながら読むんですが、まあ当たらずとも、ムチャクチャ遠くもなく。
なのになぜどんでん返しを感じるかというと、著者の犯人隠しがうまいからに他なりません。
読んでいる途中で、
「まあ、こういう展開だと、この人は容疑者からはずれるなあ・・・」
と思わせるのがうまいわけです。
でも正直言うと、長すぎる。いや、長編おおいに結構なんですが、無駄に長すぎる。それは要するに、いくつも張った伏線をうまく文字の海の中に埋没させたいためのカサ増しでしか無いように思えます。
カサ増しも面白ければ良いのですが、それが非常に微妙・・・
だから、こんなにも長いのに、犯人には深さが無い。他作品と比べるのは無粋ですが、獄門島の犯人や、悪魔の手毬唄の犯人に比べると、覚悟が足りないというか・・・浅いというか・・・不可解犯罪にもかかわらず、探偵が開示する犯行時の状況というのは、かなりドタバタしてます。
ミステリにおいて、「長年積み重ねた恨みとか綿密な計画とかの無い犯人」はきついなと思いました。
この小説の真犯人はかなりイキアタリバッタリ。本当の真犯人もどちらかというと、イキアタリバッタリ。
まあ、私もかなりひどいこと書いてますが、「面白く無い作品」では無いですよ。
「面白い作品」でも無いんですが・・・
なんか、ムダに疲れたって感じです。
ちょっと目先を変えて娯楽作品を読むことにしよう!そうだそれがいい。
例の青森の古本屋さんに、山田風太郎忍法帳が予想以上にたくさんあったので、どれか取り寄せてみようかな?
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