白と黒と火車
「金田一耕助モノ読んでまえ」シリーズ第何段か忘れましたが、「白と黒」読みました。
以上です。
いや、ホント。なーーんも書くこと無いです。読後の印象は人それぞれで、発表当時と今とでは、背景も違うことでしょう。
でも、この白と黒は・・・本当に面白くない・・・。
ムダに長い。同じ描写を、語る人物を変えて何度も記述する。
水増しとしか思えない。
国語辞典の方がまだハラハラドキドキ読み応えあります。
読んだのは3月頃ですが、もう、記事にするのすら苦痛で、放置しておりました。
あんまりガックリきたので、しばらく金田一モノから離れようかなとまで考えたり。
残りの作品群を見ても、「悪魔が来りて笛を吹く」くらいしか面白そうなもの無いし。
てなわけでという事でもないのですが、宮部みゆきさんの「火車」を読みました。
※ネタバレはしません。なるべくこの記事読んだひとが
「ウォ~~火車読みてェ~~」
てなるような書き方を心がけます。
goo辞書より
かしゃ くわ― 【火車】
(1)〔仏〕 生前悪行を働いた亡者を乗せて地獄へ運ぶという、火の燃えている車。火の車。
「身を責め骨を砕く―の責め/謡曲・綾鼓」
(2)「火車婆(ばば)」の略。
(3)死体を食いに来るという、想像上の妖怪。
(4)〔中国語から〕汽車。
フーム、色々意味があるんですね。この小説では冒頭に(1)が引用されています。
"生前悪行を働いた亡者を乗せて地獄へ運ぶという、火の燃えている車。火の車。"
「生前悪行を働いた亡者」とは、小説中の誰を指しているんでしょうね。
その亡者を乗せて地獄へ運ぶという火車・・とは何の事を指しているんでしょうか?
あらすじ産業株式会社(オオ!久しぶり!)
刑事本間は、遠縁の和也の失踪した婚約者捜索を頼まれる。
失踪した婚約者・関根彰子とはいかなる人物であったのか?
新城喬子とはいかなる人物であったのか?
主人公は刑事である本間さんでしょう、一応。
しかし私はこの小説の主人公は「新城喬子」だと思ってます。
なぜ火車から死に物狂いで逃げなければならなかったか?
刑事本間は喬子に追いついて、救い出す(いろんな意味で)ことは出来るのか?
小説は冒頭からクライマックスまで細かな「何でそんなことに?」を積み重ね、読む人を途中で離しません。
これを例えるなら、夜中テトリスをしていて、「もう1時だから寝よう」と布団に入るも目がギンギンで寝られず、またテトリスをはじめてしまう・・・気付いたら朝・・・
そんな感じです。
あと、主人公本間刑事は実はそんなに魅力的な人物では無いのですが、それ以外の登場人物が魅力的な人だらけです。
かつて関根彰子の自己破産の手続きをした弁護士さんなんかはかなりいい人。一言一言が重く、誠意がにじみでてます。
関根彰子が関根彰子としてかつて勤めていた今井事務機の社長と事務員のみっちゃんもかなり私のなかでツボ。
こういう大勢のいい人を少しずつ傷つけて、それでもなぜ新城喬子は逃げ続けなければならなかったか。
重厚で切ない小説でした。そのチョイ前に読んだ「白と黒」とは・・・いや比べるのはよそう。
ほめてばかりでは何ですので、個人的に少しマイナスに感じたところを1点。
最後の数ページは要らないと思いました。
この事件は解決して欲しくなかった。
ちょっと長くなりましたので、同じく宮部みゆきさんの「理由」はまた別な機会に記事にします。
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コメント
どんな天才作家でも、量が増えると質が落ちるのは避けられないみたいですねー。ましてミステリの場合トリックという使い回しできない部分が核だから・・・・ミステリじゃないですけど、10年ぶりに復活した「敵は海賊」の新作が仰天するほどつまんなくてショックでした。
投稿: misodrill | 2008年5月12日 (月) 22時01分
misodrillさん今晩は。
そうですねえ。凡打100連発の作家さんなら、何も思わないんですけど、私たち読み手はつい勝手ながら
「あの時のような場外ホームランを毎打席打ってくれ!」
と、期待しすぎる部分があると思います。
とくに横溝さんのミステリは
「犯人が誰で、いかにしてそのトリックを成しえたか?」
に比重がデカイので、「前に似たようなトリックが・・・」と思ってしまうともう冷めちゃうんですよー。
その点、宮部さんのミステリ(厳密にミステリなのかどうか謎ですが)は犯人は、わりと最初のほうから
「ボク、犯人です」
みたいな登場の仕方で、その犯人当てよりも、事件の不可解性に重点を置いている気がします。
・・・まあ、今の時代に即しているというのが大きいとも思います。あと20年もすれば、宮部さんの作品も
「ヒネリの無い、古臭い作品」
という評価になるかもしれませんし。
その当時の世相というのは大事な味付けであると痛感しました。
投稿: 早瀬五郎 | 2008年5月13日 (火) 21時32分