眠れる奴隷
※今日の記事は「ジョジョの奇妙な冒険」を見てない人には非常にわかりにくい内容ですが、文章のリズムを大事にしたいのであまり注釈を入れておりません。ご了承ください。
先日、勢いで購入した「ユリイカ荒木特集本」を夜な夜なニヤニヤしながら読んでいるわけです。
読んでいて、改めて気付いた事があります。
(いや今頃になって気付いたという事が、ジョジョマニアとしては恥ずべき事なのですが)
ファンにあまり人気の無さそうなジョジョ第5部ですが、ラストエピソードで「プロローグをエピローグで見せる」という荒業をやってます。
ローリングストーンという名の石が、死期の近い人間の最期の姿を彫り出す。
狙撃手ミスタは、チームリーダー ブチャラティの死の姿をあらわしている彫刻を発見し、そのカタチを変えるべく、石を撃ち続ける。
石は余計に酷い死に様をさらす。
いよいよ事態が飲み込めてきたミスタは、「自分の最期が彫り出されていない」ことを逆手にとり、石を抱えて建物の高所から飛び降りる。石を破壊するために。
飛び降りの衝撃から奇跡的に逃れたミスタはやはり死なず、石だけがうまく破壊された・・・かに見えたが、ミスタがその場を去ったあと、今度はその破片により、ブチャラティ、アバッキオ、ナランチャという3人の死の姿が彫られていた。
当時私は何気なく読んでいて気付かなかったのですが、ここにはいくつもの意味が隠されておりました。
①ブチャラティはサンジョルジョマジョーレ島で組織のボスに殺され、
②コロッセオで精神が入れ替わった時、器の方がミスタに撃たれ(ドッピオが死亡したが、見た目上はミスタに狙撃されたブチャラティの死)、
③すべてを終え、ジョルノに後事を託して死んでいく。
ブチャラティは運命から逃れることが出来ず、3度あらわされた彫刻のカタチを、追体験していくわけです。
連載時の時系列でいくと、彫刻が運命をおさらいしている形になりますが・・・
しかしそれにも増してさらに気がついた重い事実というのは、
「最初にブチャラティが石を受け入れて安楽に死んでいれば、石のカタチがそれ以降変わることは無く、アバッキオとナランチャは死なずにすんだ」
という事実。このへん、何も感じる事なく流して読んでました。
ブチャラティがいなければ、ジョルノが加わってくる可能性が薄いし、ボスを暗殺しようなど、だれも考えないはず。
ミスタをふくめたブチャラティチームの行動はすべて無意味だったのか?
止まっていれば、犠牲も増やさず安楽に逝くことが出来たのに、進むことを選ぶ。
進む先に悲劇しか無いのは石を見なくとも予想出来たのに、正義の道を選ぶ。
だから私は船着場のシーンで不覚にも泣いてしまうわけです。読み返すたび。
多分自分ならあそこでフーゴと同じ選択をしてしまう。
明らかに安全な場所に留まることを選ぶ。
泥の船とわかっていて乗ることは出来ない。
あの船に向けて歩き出すアバッキオの表情とセリフひとつひとつが胸に痛い。
散々迷ったあげく、泣きながら泳いで船を追いかけるナランチャの姿が痛々しい。
決意の重さにため息が出る。
ジョジョシリーズは常に「結果だけを欲しがる者」と「過程を大事にする者」との戦いの歴史なのですが、5部は特に「出自も環境も末路も救われない者達の正義の戦い」という点で他の部より暗いイメージがあるかもしれません。
しかし、読めば読むほど心に刺さってくる、味わい深い部であると言えるでしょう。
知らない人にはこの漫画自体勧め辛いですが、2部とか3部で読むのを辞めた人には是非、4部や5部は読んで欲しいなあと思います。
あと、本当に超個人的な意見ですが、ベストバウトが多いのも5部。
ギアッチョVSミスタ+ジョルノなんかは、コミックスが変色するほど読み返しました。
私的にはDIOVS承太郎より上。
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コメント
ローリングストーンの描いた未来、私もなんとなく見過ごしていましたが、なるほどと思いました。5部にベストバウトが多いというのも同意!わたし的にはプロシュート兄貴&ペッシVSブチャラティが好きです。
投稿: あっかー | 2008年3月28日 (金) 00時45分
あっかーさん今晩は!
プロシュートのアニキは悪側らしからぬ、大事なことを言いますよね。
3部、4部、6部の敵は実際のところ寄せ集め集団なのでしょうが、5部の敵はボス親衛隊にしても、暗殺チームにしても「訓練されたプロ」という感じがしますよね。ヘタレて途中で謝ったりする小悪党もほとんどいませんし。
そのへんでいきなり戦闘に緊迫感が増すのかもしれません。
そんな緊迫感ある戦闘の中でも「水着はビキニなんだ!俺の下はスタンドだ!」などという腰砕けを入れてくれるナランチャVS親衛隊もカナリ好きです。
投稿: 早瀬五郎 | 2008年3月28日 (金) 01時15分