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2007年12月19日 (水)

傑作登場!

少し前の記事にも書いたとおり、金田一耕助モノ読んでまえシリーズ(もう、第何弾か数えるのがおっくうになってきましたが)、

「貸しボート十三号」読みました。新幹線の中で。

この本は貸しボート十三号を含む、中篇3本で構成されております。
内訳は、

湖泥(こでい)
貸しボート十三号(かしぼーとじゅうさんごう)
堕ちたる天女(おちたるてんにょ)

以上の3本でーす。ふんがっふふ(昭和のサザエさんか!)

この本自体が絶版ですからね。何年か前に編成しなおしがあって、金田一モノが整理されたとき、湖泥だけは生き残って、別な短編集「人面蒼」に組み入れられてます。
なので、湖泥は今更読むに及ばず。

堕ちたる天女もミステリマニア向けというより、大衆向けエログロ小説なので、まあスルーですな。
犯人の意外さも、短編モノとしてそこそこかなあ。
まあ、読んでゲンナリすることは請合います。

さてお待ちかね「貸しボート十三号」です。

こんな所に驚くべき傑作が!!

死体発見から物語は始まります。
どこからとも無く墨田川下流に流れ着いたボート。
ボートの中には男女1組の死体。
女は40絡み、男は20代前半。
心中にしては、年の差カップル過ぎないか?
女はコートまで着込むほど着衣はしっかりしているのに、男のほうはパンツ1丁。
全裸死体ならまだ小説の死体のあり方としては考えられるが、

なぜパンいちなのか?

まだありますよ。
解剖の結果、男は刺殺後、意味も無く首を絞められており、女は絞殺後、やはり意味無く刺殺されている。

なぜすでにこと切れた遺体に意味も無く手間をかけているのか?

なぜ「刺殺絞殺」「絞殺刺殺」と順番が統一されていないのか?

まだまだ。
遺体はふたりとも、途中まで首を切断されている状態。

首切断は遺体の身元判明を遅らせるための、横溝小説定番の手法ですが、

なぜ途中でやめているのか?

なぜ、犯人は遺体ふたりをボートに乗せて川に流さねばならなかったか?

謎だらけです。

このわけのわからない遺体発見状況を、金田一にしては珍しく関係者全員を一同に集め
「悲しい犯人のやるせない事情」

を解き明かしていきます。
※金田一少年はよくやりますが、金田一自身はロビーに全員集めて「犯人はこの中に」的なことをほとんどやりません。

これはかなり面白い。遺体の不可思議な状況はすべて論理的に説明され、その解決編は一種、感動的ですらあります。

登場人物も、生き生きとしていて愛すべきキャラが多く、
「この中から犯人出て欲しくないなあ」
と読みながら思うほど。

長編モノは基本的にハズレ無しですが、短編、中編モノは基本的にエログロ路線のハズレが多いというのに、たまにこういう満塁場外ホームランが出るので、あなどれません。

再販の可能性が薄いので、なかなか手に入れるのは難しいかもしれませんが、ミステリマニアの人は読んでぜったい損はありません。必読です。


そろそろ金田一小説の感想は当ブログのカテゴリとして独立するべきかなあ・・・

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