鵺の鳴く夜はおそ松くん
※今日の記事は主観に満ちています。ご容赦ください。
勉強の合間に文庫本なのか、文庫本読破の息抜きに勉強なのか、よくわからない状態の五郎です。
本当にブログ更新休止中なのだろうか?
さて、早瀬五郎の金田一耕助作品読んでまえシリーズ第何段?・・・「人面蒼」読みました。
実は短編集です。1冊の中に、
・睡れる花嫁(ねむれるはなよめ※)
※さいしょ「たれるはなよめ」て誤読してました。「目ヘン」がついてるじゃ~ん。実は「垂れる花嫁」でも、内容的にそんなに間違ってないというところがミソ。
・湖泥(こでい)
・蜃気楼島の情熱(しんきろうとうのじょうねつ)
・蝙蝠と蛞蝓(こうもりとなめくじ)
・人面蒼(じんめんそう)
と5本の短編が納まっています。
この短編集はスゴイ。
食前、食後、気分が沈みがちなとき、深酒の後、二日酔いの朝・・なんかには、読むべきではないでしょう。
ミステリ小説というより、怪奇小説ですねえ。
とにかくどの作品も、
「死体○○」
「△△」
「○◇*&」
など、文字ヅラ的にヤバイものばかりです。
上記、ほとんど伏字ですみません。
「死体」が一番明るい表現って・・・^^;。
一応どれも、「意外な犯人」というところではハズレはありません。
しかし「犯人は誰々です」というところにたどりつくまでが、禁忌オンパレードです。
もろ手を上げてオススメできないですが、犯人探しの面白みは残ってますので、興味のある豪胆な方にはオススメです。
特に、湖泥の真犯人は必見!
蝙蝠と蛞蝓は、そうは言っても殺人事件なので、軽々しいことは言えないですが、「明るめの小咄」と言ってもいいかもしれません。
まあ、短編集なんで、ミステリの内容的にはこれくらいが調度良いです。
「サクサク読めて、意外な犯人」
あまり犯人像に長編・金田一モノのような重厚さを求めてはいけないのかもしれません。
しかし次に問題作が!
「悪霊島」上下巻も読み終わりました。
これは問題作ですよ。(以下、本当に主観です。悪霊島ファンの人ゴメンナサイ)
私は鹿賀丈史さんが金田一を演じた1981年(26年前!)の映画も見たこと無いし、原作も今回が初見です。
長編怪奇小説ですねえ。
怪奇小説と見せかけて冒険小説で、祟りとか怨念とかと無縁の近代的思考の犯人だった「八つ墓村」
とか、
怪奇小説と見せかけて、しっとりと叙情的に見せた「獄門島」
とかとは趣きが異なる、
「怪奇小説に見せかけて、そのまま怪奇小説」な作品でした。ちょっとガッカリ。
人それぞれかもしれませんが、上巻の途中くらいで、「この人犯人かなあ」と思った人が、そのまま犯人だったりして、ちょっとガッカリ。
金田一モノの犯人といえば、「必然性と緻密な計算」というのが通例のように思うのですが、悪霊島の犯人は、深さが無い。
汚らしさ(←心の)ではトップクラスだろうと思いますが、謎解き編で「う~~ん」と唸る部分が無い。
いや、面白いか面白くないか?ということで言えば、充分面白いわけです(必死の弁解)。
横溝・金田一作品ということで、どうしても期待は大きくなりすぎてしまうわけです。
しかし、獄門島や悪魔の手毬唄、悪魔が来たりて笛を吹く、本陣殺人事件などのような、読後の「読んだーー!」って感じが薄い。
手毬唄も、笛を吹くも、本陣も、悲しい運命に押しつぶされて悪魔になってしまう犯人像が、胸に迫る読後感を与えてくれるのですが、悪霊島の犯人は・・・いや被害者、依頼者すべてにおいて共感できる人がいない。
そう、まさに上記「人面蒼」の短編のどれかをローラーで長編に引き伸ばしたような感じ・・・
ちょっとねえ・・・
ただ、あの超有名な映画のコピー
「鵺(ぬえ)の鳴く夜は、おそろしい・・・」
という言葉の意味はわかります。確かに鵺の鳴く夜はヤバイ。
上下巻の大長編なのに、開始1ページ目で犯人像のほとんどを記述しているのも、刺激的!
やはりここは口直しに、「悪魔の手毬唄」でも読もうかな?
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コメント
また今度その本貸して下さい!
ただ展示会が近づいてきてますんで、読むのに時間かかるかもしれません。早瀬さんの展示会の準備は…ってそれどころじゃないんですよねw
こちらは順調と言えなくも無いレベルです。がんばってます。
投稿: 夏侯 | 2007年11月 1日 (木) 17時17分
聞いた話ですけど、江戸川乱歩は「犬神家の一族」のタイトルに猛反対だったそうです。自分が、本格を目指しながら怪奇作家になってしまったので、横溝正史に同じ轍を踏ませたくなかったらしく、横溝や編集者が「本当に犬神とか出てくるわけじゃないから」と言っても中々納得しなかったそうです。
投稿: misodrill | 2007年11月 1日 (木) 23時35分
夏侯さんからは、「リクエスト来るだろうな?」と思って、筆なごみ@ひでか~ずさんに、飛脚をお願い致しました。
今日中には「人面蒼」届くはず。
悪霊島は、もうちょっと待ってください。
実は懲りずに「悪魔の手毬唄」を購入してしまいました。
夏侯さんには手毬唄を先に読んでほしいです。
少し磯川警部への愛着を深めてから、悪霊島に行ってほしいのですよ。
手毬唄は賭け値無しです。
お楽しみに。
投稿: 早瀬五郎 | 2007年11月 2日 (金) 12時09分
misodrillさんやはりお詳しいですね。いつもミステリ関係のフォローありがとうございます!
江戸川さんも、横溝さんも、時代の流れに抵抗できなかったんですよねー。
あの頃はエログロが好まれた時代だったのでしょうか?
それのみならず、後期発表の長編は本当に冗漫。
悪霊島の犯人像に関しては、ほんとうにガッカリです。
掘り下げてすくい上げていけば、犯人の事情も無くは
ないですが、それを塗りつぶしてあまりある、勝手な人物像。
ちょっと口直しに手毬唄(←購入済みウヒョ~)や本陣を読みたいと思います♪
投稿: 早瀬五郎 | 2007年11月 2日 (金) 12時16分