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2007年9月28日 (金)

○○小説八つ墓村

先々日、仕事の帰りにB○○FFに行き、金田一シリーズの「悪霊島上・下巻」と「八つ墓村」を購入してまいりました。手ごろなお値段でした。

いや、受験生ですからね。小説読みふけっているヒマは、けっして無いのですが。

悪霊島は上・下巻の大長編ですので読み始めるにはちょっと敷居が高いのですが、八つ墓村は全体で500ページ弱と、多くも無く少なくも無く、良い分量です。
勉強の合間に1日100ページくらいずつ読んでいこうかな?と思って買ってきたその日に読み始めたわけです。

初日100ページ読んだ時点では、まだ序盤だし登場人物全て揃わないしで、「まあこんなもんか」と本を置いたのですが・・・

・・・

2日目の昨夜、と言っても今朝未明ですが、残り400ページ弱、

全部読んでしまいました。

すみません・・・つい出来心で・・・そんなわけで今日は眠いのです(自業自得)。

いや、聞いてください。

スゲエ面白いんですよ!

どうしても途中で読むの止められなかった。
登場人物が全て揃ったあたりから、「八つ墓村」は俄然面白くなってきます。

一つだけ残念なのは、私は最初から犯人を知っているということです。
犯人を知らなければ、もう2~3倍は面白いはず。
とにかく横溝さんの真犯人を覆い隠す防衛ラインは綿密です。

1.真犯人がいて、
2.明らかに犯人クサイ悪人がいて、
3.明らかに犯人クサイ中立の人もいて、
4.「いやいや、2番3番は引っ掛けでこの善意の人が犯人ですよ」と思わせる人がいて、

お察しの通り、2番の人は途中で真犯人に殺され、3番の人が俄然怪しいと思われますが、ヒネくれた読み手はひそかに4番に目をつけることでしょう。
しかしその4番も徐々に怪しい雰囲気(この人が身動き取れない時、殺人が起きない等)を増大させながら最終局面で真犯人と直接対決し、犯人に痛打をあびせるも敗れる。

4番の人が静かに息を引き取るのには本当に胸が痛みました。この人は幸せになってほしかったなあ・・・

いやいや、犯人や犯人クサイ人に言及するのはやめておきましょう。

記事タイトルに「○○小説八つ墓村」と書きましたが、今回原作を初めて読んだ私を含め、多くの人が八つ墓村に抱くイメージとして、

・怪奇小説

・猟奇殺人

・落武者のたたり

といったイメージを持っていると思われます。

ですが聞いてください。

私はまた、横溝さんに騙されました。

八つ墓村は、

「痛快冒険小説」だった!

「獄門島」や「犬神家の一族」とは明らかにカラーが違う。

「八つ墓村」は、妙ないきさつから莫大な遺産相続人であることが判明したため呪われた村に召還された若者 寺田辰弥の「私」視点で書かれています(説明長いよ)。

主人公辰弥君目線で描かれる金田一はまったく目立ちません。
時々辰弥君の前に姿を現して、ひとつふたつ質問して頭を掻きながら帰っていく風采の上がらない探偵でしかありません(物語最後で謎解きはしてくれますが)。

だから八つ墓村は私の主観ですが、推理小説でも無いんですよ。

「痛快冒険小説・八つ墓村【萌えヒロイン付き】

そんな感じです。

だからといって「騙された!ツマラン!」なんてことは無く、純粋に小説として面白いわけです。
読む人を飽きさせないような配慮もあると思いますが、他作品にくらべ割とポコポコと殺人事件が起きます。
しかも無差別殺人かと思われた被害者達を並べると、一つの法則により殺されていることがわかり、しかもその非常に趣きのある法則は、実は真犯人の本当の動機から目をそらすために仕掛けたニセ法則である事がやがて判明します。

愉快犯の無差別殺人
  ↓
と見せかけた閉鎖的な村の狂信的な法則殺人
  ↓
・・と思わせ実は本当に殺したい対象とその動機をぼやかすための連続殺人

この辺の流れは「冒険小説【萌えヒロイン付き】」とはいうものの、本格推理物の名に恥じない展開となってます。
真犯人の動機も、利己的かつ極悪で、共感はできかねるものの一応理路整然としてます。

そして萌え要素・・・

映画やTV等の映像作品では追い詰められる人物を辰弥君だけに絞り込みたいためか、重要な登場人物が一人、いなかったことにされてます。
この物語のヒロイン典子さんです。トヨエツさんの八つ墓村以外では典子役の人を見たことがありません。

こればかりは、今回原作を読むまで私も知りませんでした。
(トヨエツさんのも見たことなかったので)

典子さんは「辰弥君の父の甥の妹」という一回聞いただけでは遠いのか近いのかよくわからない血縁にあたる人です。
陰惨で猟奇的で閉鎖的で胸の悪くなるような小説を少しポジティブに変えてくれる萌え部門担当です。非常に良い仕事をしております。

「お兄様!」と大きな瞳をくるくるさせ、上目使いで辰弥君に寄り添うヒロイン。

典Pギザヤバス!

物語中、何度か窮地に追い込まれる辰弥君の前にその都度ヒラリと現れ、「会えて嬉しいですわ」と胸に飛び込んでくるヒロイン。

典Pギザヤバス!(2回言ったよこの人)

危険で脱出困難な状況にさらされている辰弥君の元に、「おなかが空いてはいけないと思って」とお弁当を持ってやってくるヒロイン。

典Pギザヤバス!(3回いっt(ry

辰哉君も最初「典子さん」と呼んでいたのに、いつの間にか

「典ちゃん」に変わってるし(笑)・・・

正直、典子さんだけを見ていると、とても横溝作品とは思えない!

怪奇小説、猟奇殺人、落武者のたたりというイメージを持たれてる方にはぜひ読んで欲しい小説です。予想外な超娯楽作品になっていて、驚かれることと思います。

横溝作品にはあまり無いと思われる、やりすぎなまでのハッピーエンドもまた逆に驚愕。

最後に一つ。小説中の金田一のセリフに何度か
「この村(八つ墓村)の近くに鬼頭(おにこべ)村というのがありまして、私そこで「夜歩く」事件を解決してその足でこちらに来ました」
と出てきます。
時系列的には夜歩く事件後そのまま岡山県に逗留していたようです。リンク好きにはタマラナイ台詞といえるでしょう。

影薄いんですが。

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