カテゴリー「アガサ棚」の33件の投稿

ミステリの王道!

2009年12月20日 (日)

満潮に乗ろうとしているのは誰か?

旅に出る前にクリスティーさんの「満潮に乗って」を読みました。
出張中にポアロ物をつづけて2本読んでますので、サクサク感想行っときたいと思います。
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しかし今回、使用人グラディスが出てきたときは、いよいよもって
「私が無知なだけで、実はグラディスって職種名があるんじゃないか?」
と思ったほどです。
メイドのなかに階級があって下っ端の方のメイドのことを「グラディス」って言うとか・・・
一時期真剣に考えました。しかしググッても人名しか出てこないんですよねえ。

あらすじ【満潮に乗って】
1.莫大な遺産を残す老人
2.再婚したばかりの若い未亡人
3.遺産を自由にできずイライラする親族一同
しかし未亡人の地位を揺るがす恐喝者があらわれ・・・

まだクリスティーさんの全作品、半分も読んでないと思いますが、遺産相続にまつわる未亡人と親族の確執っていつも出てくる設定なんですよ。
で、毎回変わるストーリー展開。
毎回変わる動機。
毎回変わる犯人。

なんか、クリスティーさんの「この設定で描いてない展開は無いか?」という意地が垣間見えます。

今回の特筆すべき点は、「なかなか最初の犠牲者が出ない」というところです。
冒頭、遺産を残して老人は死ぬわけですが、これは完全な事故死で疑いの余地は無い。

物語は完全に

若い未亡人とその兄VS親族一同

の図式。

で、親族からねたまれている若い未亡人の命が狙われるのかと思いきや突然未亡人の立場を危うくする恐喝者が現れた。

色々書くと、どうしてもネタバレしてしまいますので、今回は極力書きませんが、物語は巨大なシーソーのように右へ左へと揺れつづけ、犯人の動機、犯行の過程など、予想もつかない結末へむかっていきます。

今作、実は私の評価は低いです
途中まで物凄く面白かったのに、最後の最後、後日談の所で「キモチワルイ作品」になってしまった感があります。

うまく言えないのですが、最後の男女の会話がものすごく独善的でキモチワルイ。

ただ、最後の数ページ読んでて「うへぇ、気持ちわりー」と思いつつも、実はそれすらもクリスティーさんの
「ほら、今回の事件、あらゆることがいびつで違和感があるでしょう?」
というデカイ釣り針にウッカリ食いつかされた感があり、うまいなあと思う自分もいます。
このへんはうまく説明できないです。
つまらない作品では無いです。念のため。

しばしポアロさんシリーズを読んでいこうかな??

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2009年12月 3日 (木)

犯人はこの中にいません!

クリスティーさんの「NかMか」を読みました・・・随分前に。
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トミー&タペンスはやはり良い。なんとなく、60年代のシットコムって雰囲気が、自分の琴線を刺激しまくります。
厳密に言うとミステリー小説ではなく、冒険スパイ物という趣きです。
殺人事件が起きて犯人はこの中の誰?
というのではなく、
敵国のスパイがこの集団の中に紛れ込んでいる。それは誰?
という物語です。

あらすじNかMか
年代は第二次世界大戦真っ最中。かつては組織に属して夫婦で諜報活動をしていたトミーとタペンスも今や40代後半。子供達もトウに独立し、職探しに明け暮れる退屈な毎日。そこへかつての上司の同輩から諜報活動の依頼が入る。
イギリス内部にドイツのスパイが潜入し、自国の情報を漏洩している。そのスパイ2名を暴き出さねばならない。
凄腕スパイN(男性スパイ)とM(女性スパイ)はとある別荘に潜伏中とのこと、トミーもタペンスも身分を偽って潜入するが、そこはスパイという言葉とはあまりにも距離感のあるたいくつな別荘で、住人もありきたりな人達ばかりだった・・・

時間的にはこの後の作品になる「親指のうずき」では、敵陣のド真ん中で真相にたどり着いたタペンスが後ろから何者かに殴り倒されて場面転換!というのが、盛り上がりポイントでしたが、今作で敵スパイの正体に最初にたどり着くのはトミーのほうでした。

とある人物の部屋で敵国スパイとしか思えない通信機器を発見

振り返るとそこには今までの温厚な表情とはガラリと変わったその人物

徹底した愚者を装い、苦しい言い訳をして辞去するトミー

距離的にも時間的にも危機を脱してほっとしたトミーは後頭部に重い一撃をくらって昏倒

読んでて手に汗握ります。
五郎「ウワー!やっぱり誤魔化せてない!敵スパイ怖ェー!」

トミーとタペンス以上に私がその活躍を期待しているアルバート(初登場時15歳)も家庭持ちのオッサンになってますが活躍ぶりが衰えるどころか冴えまくってます。

トミー&タペンスシリーズは10本くらいあってもいいのになあ・・・

続けてポアロさんの「満潮に乗って」を読みます。

続きを読む以降は備忘録
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2009年11月24日 (火)

ギュウギュウダイオー

フハー・・・
ひさびさにギュウギュウの仕事ぶりでした。
なんかすんごい山火事をミニスポイドで水吸ってきて消してるかんじ・・・
まあ、消えそうな見通しにはなったのですが。

趣味的にハードな時はブログ更新する気もおきるんですが、仕事がキツイときは、さすがに更新する気がうせますね。

クリスティーさんの「NかMか」読んだんですが、記事書くヒマなし。

面白かったのは間違いないです。いつか記事書きます。

さすがトミー&タペンス(そして従僕アルバート)

ちなみに登場人物にまたしても

メイドのグラディス

が出てきます。

私の中でメイドといえば「萌え要素」ではなく「グラディス要素」。
※多分今回で5度目の登場。あと何回「メイドのグラディス(もちろん毎回別人)」が出てくるか楽しみで仕方ありません。

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2009年11月16日 (月)

距離も時間も動機すらもすり替える犯人

↑さらにもっとすごいモノをすり替えてますが、それはさすがに秘密

クリスティーさんの「書斎の死体」を読みました。
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書斎の死体というのはミステリー小説の定番中の定番・・・というか、良く子供の頃に見た推理クイズの定番シチュエーションですね。
クリスティーさんは、色んな掟破りが登場した現在ではあまり目立ちませんが、当時のミステリー界では「セオリー破りの筆頭」というイメージがあります。
「なんと○○が犯人!」
とか、
「被害者が◇◇◇!」
とか、
「全員▲▲!」
とか、
そういう小説を多数書いてきた作家さんです。
そのセオリー破りの人が、定番シチュエーションに挑む!
という、なんとなく自己皮肉の趣きがありますね。

そして予想通り、ひとひねり入った「書斎の死体」になってました。

あらすじ【書斎の死体】
バントリー大佐の書斎にて、若い女性の死体が発見される。バントリー夫妻と親交の深いミス・マープルは、事件の解明に乗り出すが、第2の殺人も起きて、事件の様相は犯人自身があせるほど混乱していく。

犯人の描いた計画は、思わぬ妨害にあって破綻すると思わせますが、妨害があったからこそ余計にマープルの推理のスピードが鈍る結果となってしまってます。読者には正解の形も、妨害によってゆがんだ形も、謎解き編にならないと見えてこないですが・・・
フーダニット(誰が犯人か)やホワイダニット(動機)よりも、ハウダニット(いかにして実現しえたか)に重きを置いた物語です。個人的には動機モノが好きなので、100%オススメとは言えないですが、嗜好は人によりまちまちですので、犯行方法に興味があるひとにはオススメできます。
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さて、現在は私イチオシ探偵トミー&タペンスの「NかMか」を読んでます。

続きを読む以降は個人的備忘録。

続きを読む "距離も時間も動機すらもすり替える犯人"

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2009年11月 5日 (木)

心の優しいひとは分別がない

クリスティーさんの「魔術の殺人」読み終わりました。
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あらすじ【魔術の殺人】
非行少年を集めて更生を支援する慈善事業家セロコールド氏とその妻キャロライン。
マープルはキャロラインの姉ルースから、「妹の周辺に不穏な気配を感じてならない。見に行ってもらえないか」とたのまれ、更生施設兼セロコールド氏の邸宅に客として乗り込む。
そこにはキャロライン1人目の夫との間の実子、養女の娘、その夫、2人目の夫の連れ子兄弟などが皆、独特の雰囲気で暮らしていた。

当たってましたよ。私が予測した犯人。

しかも、最初の被害者が誰かもわからないうちに、犯人だけがわかりました。

ポルナレフ「何を言ってるかわからねーと思うだろーが(以下略

読んでいて、あ!今、誰かを殺してきたな?

という瞬間があります。
今までクリスティーさん他、色んなミステリー読んで来ましたが、この作品だけちょっと特殊だと思いました。
クリスティーさん、犯人のことを書きすぎていると思います
(さじ加減の多寡は人によって差があると思いますが、私はそう感じました)

この作品以外で著者が犯人のことを正直に描写しているものって・・・

うーん、あんまり無いような気がします。
今ちょっと考えて思い浮かぶのは横溝さんの「獄門島」くらいかな?

もちろん犯人以外にもあやしい人間がたくさん登場するのですが、最初に犯人に気付いてしまうと、以降の展開すべてに整合性が取れすぎていて(それは小説としてあたりまえのことなのですが)他の人はまったく疑えません。
「いやいや、どんなにあやしくふるまっても君はかませ犬だよ」
そう思えてきます。

犯人が早めにわかっても充分面白い小説なのですが、個人的なマイナスポイントは「登場人物が多いし血縁関係が複雑すぎる」ということです。
物語のキーになるキャロラインという人物が3回も結婚していて、養子、向こうの連れ子、実子、最初の夫の兄弟など入り乱れて、読んでいて私の頭上は??だらけです。
で、最初の100ページくらいを何度も行ったり来たりして読み返していくうちに、人間関係が把握できると同時に、その100ページを越えたあたりで犯人がくっきりと見えました。
マープルさんの独り言も、今回は的確すぎ。

秋はやはり読書に向いてますね。引き続き「書斎の死体」「NかMか」を読みたいと思います。
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2009年11月 3日 (火)

リルケの栞

会社の人に、大量に「しおり」もらいました。
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文庫本、何冊でも来い!

て感じです。
さて、レジンキャストを注ぐかたわら、クリスティーさんの「魔術の殺人」を読んでおります。
残り少ないマープルさんの作品です。
まだ1/3ほどしか読んでないんですが、

犯人わかったかも

どうでしょうか?これはあのひとが犯人でしょう・・・
なんか事件の全体像も見えた気がします。
(といって今まで色んな作品で大きくはずしてきた私ですが)

いや、今度ばかりはわかったよ。これは外さないよ!

続きが気になるので今日はこのへんで。

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2009年10月 6日 (火)

名探偵ルーシー・アイルズ「バーロー」

・・・今日の時点で、バーローでグーグル検索すると高山みなみさんのwikiが3番目でした。しかもwikiの説明文中にバーローなんて出てこないのに・・・かつて書かれてて、今は削除されてるんでしょうか?不思議です。
探偵といえば「フィリップ・バーロウ」というのもいますねゲフンゲフン。
どうでもいい前置きですみません。

クリスティーさんの「パディントン発4時50分」を読みました。
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マープル物なんですが、驚くなかれ、

今回は冒険小説です

・・・冒険小説は少し言いすぎました。でも、今回のマープルさんは、いつもの村を出て、敵地に乗り込んで事件を解決します。美人メイドをリモートコントロールしながら。

※今回も、ほんの少しもネタバレダメナノヨという方は以下読まないでください。「ちょっとくらいならネタバレもいいじゃない、御菓子を食べればいいじゃない」という方のみお読みください。

あらすじ【パディントン発4時50分】
マギリカディ夫人はパディントン発4時50分の列車の窓から、並走する列車内の個室で男がこちらに背を向けて女性を絞殺している現場を目撃する。夫人は車掌にも警察にも問い合わせるが、それらしい死体は発見されない。死体は動く列車内から意外な場所へ移されており、マギリカディ夫人の友人マープルはそれを追いかけるため、有能な若いメイド「ルーシー・アイルズバロウ」を雇い、とある屋敷に潜入させる。

いいですね。あらすじが支離滅裂ですねw

・冒頭の並走する列車内の殺人目撃

・後ろ姿の犯人は高身長・黒髪

・列車沿線にふとある屋敷

・屋敷の当主は金持ち因業親父

・後ろ姿で登場する高身長・黒髪の息子3人!

・問題の屋敷から雇用依頼が来るまで粘り強く他を断り続け採用を決めるルーシー

・潜入したルーシーはやがて敷地内の納屋の石棺のフタを空け・・・

もう、怒濤のごときスペクタクルです。隠すほどのギミックでは無いので、バラしてしまいますが、犯人は列車から死体を投げ捨ててます
何度か自分も同じ車両に乗り、付近の地図を眺めて
「この屋敷周辺に死体を遺棄、当然屋敷に出入りできる人物が犯人」
と序盤で仮定していくマープルさんの冴え渡る推理。

金持ち当主もクリスティー劇団の伝統的な因業ジジィでいっさいブレがありません。
息子3人+妹婿も「放蕩絵描き」「神経質な金融界の大物」「半分裏社会にいる優男」「夢想家の退役軍人」とオールスターキャストのわかりやすいラインナップ。

そんなおいしい登場人物オンパレードの中、遠隔地にいるマープルさんの期待通りの任務を遂行しつつ、メイドの仕事も120%の出来栄えでこなすルーシーが、魅力にあふれていて素晴らしい。

唯一、惜しいなと思うのは、「犯人の動機が軽い」ということです。
悪くないんですけどね・・・長々読み続けてきて、いよいよのところで明かされる真相というのはそれなりにカタルシスが欲しいわけです。

これは私個人がフーダニット(誰が殺しえたか)よりホワイダニット(なぜ殺さなければならなかったか)が好きだからなのかもしれません。

続いて「魔術の殺人」を読みます。
マープルの1ダースコンプリートまであとわずか!

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2009年9月24日 (木)

マープルの1ダース

アガサクリスティーさんの名作と言われる「火曜クラブ」を旅行の移動中にようやく読みました。
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マープルさんが登場する長編作品は全部あわせて12本しかありません。マニアの間ではこれを「マープルの1ダース」と呼ぶそうです。そしてマープルさんの短編小説はこの「火曜クラブ」1本きり。数が少ないだけに、中身の濃いものとなっております。
短編集なので、犯人の背負った深い業とか、各人の証言のスキマから来る真相の発覚といったダイナミズムは無いですが、ウミガメのスープ的水平思考クイズ集という趣きがあります。

あらすじ【火曜クラブ】
マープルの甥レイモンドが暇つぶしに友人知人を招いてはじめた【自ら見聞した不可解事件を披露して正解を競わせる会】その名も「火曜クラブ」。集まったのは元警視総監、老牧師、女流画家、弁護士、退役軍人、医者、女優等々・・・
元警視総監サー・ヘンリーは話が進むにつれ、毎回一人だけしかもいきなり正解にたどり着いてしまう老嬢マープルに尊敬の念すら抱き始める。
後日ヘンリーを訪ねたマープルは、村で起きた溺死事件の犯人が冤罪で、真犯人は別にいると訴えに来た。
「適当にやり過ごしても良い村の老人からの訴え」だったが、先日の12の物語を体験しているヘンリーは、マープルの訴えを受け入れ、事件を洗いなおす。

集まったメンバーは解答者としてもまともな解答はできず、出題するもマープルさんに必ず当てられ、いいところまったく無しです。
この短編集のキモは当然、最終話「溺死」です。最終話までの話は、元警視総監から見て何のとりえも無さそうなマープルという老嬢の推理が信用に足る物であると証明するための12本のお話。これもすなわちヘンリー卿に宛てた「マープルの1ダース」と呼んでいいのではないかと思います。

1話から6話までが、レイモンド主催の「火曜クラブ」に集まった6人が披露するお話。7話から12話までがバントリー夫妻(ミセスバントリーは「鏡は横にひび割れて」他に登場)の晩餐会にて突発的に始まった犯人当てで集まった6人から披露されるお話。
序盤は肩慣らし的な簡単な話が続き、後半に行くにつれ難解な事件で、しかも元警視総監や弁護士、退役軍人の話の方が簡単な話で、家庭菜園にしか興味のない主婦やト書きにすら「美人だが頭はカラッポ」と書かれている女優の話の方が複雑で難解というのがミソ。
特にバントリー夫妻の晩餐会の後半は

「話者が稚拙=ヒントが少ない」



「まわりの知識人が質問を繰り出し、次第に明らかになる真相」


というウマイ構成になってます。
ちなみに全然どうでもいい話なのですが、第1話で披露されるお話のメイドの名前はグラディス!

話を披露する順番は以下の通り。

第1話:火曜クラブ(元警視総監サー・ヘンリーの話)
同じ夕食をとった3人のうち、一人だけ食中毒で死亡。

第2話:アスタルテの祠(老牧師ペンダーの話)
衆人が見守る中、身を隠すところも無い平地にひとり立っているところを刺殺される男。

第3話:金塊事件(マープルの甥レイモンドの話)
金塊を積んだ沈没船引き上げ事業に取り組む男が何者かに襲われ、目覚めると金塊は跡形も無く消えた。

第4話:舗道の血痕(女流画家ジョイスの話)
若い夫婦と夫の昔の女友達。妻は殺されるが、夫にも女友達にも別個にアリバイが。後の某長編作品のプロトタイプ。

第5話:動機対機会(弁護士ペサリックの話)
金庫に保管してあった遺言状が白紙に変えられた。すりかえたい人物には機会が無い。すりかえる機会があったのはすりかえる必要のない人物。

第6話:聖ペテロの指のあと(村の老嬢マープルの話)
「鯉をひと山」。居合わせた全員が一旦はあきれたマープルの話は、あざやかに全員の度肝を抜くオチを決めて正解者無し。

第7話:青いゼラニウム(退役軍人バントリー大佐の話)
満月の夜、心霊術師の予言どおり夫人はベッドの上で死に、部屋の壁紙のゼラニウムは青く変色していた。

第8話:二人の老嬢(医師ロイドの話)
海水浴に来た資産家とその話相手という2人の老嬢。海水浴中に溺死したのは話相手の方だった。

第9話:四人の容疑者(元警視総監サー・ヘンリーの話)
命を狙われていた男が死亡。容疑者は秘書、姪、庭師、家政婦の4人。護衛のため前もって秘書に化けて潜入していたヘンリーの部下すらも容疑者から外せない超難問。

第10話:クリスマスの悲劇(村の老嬢マープルの話)
マープルが知り合った夫妻の妻の方が何物かに殺害されるがマープルが犯人と確信する夫にはマープルですら証人になれるほど強固なアリバイがあった。

第11話:毒草(ミセス・バントリーの話)
遺産を受け継ぐ予定の娘が死亡。原因は食材に紛れ込んだ毒草だが、それを摘んで来たのも死んだ本人だった。

第12話:バンガロー事件(女優ジェーン・ヘリアの話)
支離滅裂な語り口で解答者全員右往左往したあげく正解は出ず。しかし会が終わり去り際にマープルは女優に2言3言ささやく・・・

第13話:溺死
身重の娘が溺死体で発見され付き合っていた男が疑われるが、マープルはヘンリーに真犯人の名前を書いたメモを渡す。

前半の話は強引なトリックもあり、納得できないオチもあるんですが、後半の手に汗握る話へむけての「ビールの前のサウナ」くらいの気持ちで読み進めるのが吉。
3話の消えた金塊の行方と犯人5話の遺言状が白紙に取り替えられるトリックは期待してはいけません^^;
あくまで8話くらいから始まるミステリーへの助走と考え、広い心で読むべきでしょう。

そうは言いましたがトータルではクリスティーさんの他の長編に負けるとも劣らない名作であると思います。

さて続きまして「パディントン発4時50分」を読みます。
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トラベルミステリーなので、本当は旅行中にこっちを読もうと思ってたんですが、火曜クラブが面白すぎました!

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2009年9月 3日 (木)

クリスティー劇団

クリスティーさんの作品、色々読んできましたが、探偵としてはトミー&タペンスが一番好きです。作品で選ぶとまた話は別ですが。

コネタマ参加中: あなたが好きな“名探偵”は誰ですか?

ココログさんのネタに参加するとみせかけ、いつもの日記です。

かもねぎさんから『クリスティー作の中で有名ではない名作ではコレがオススメですよ』と教えていただいた「ねじれた家」を読み終わりました。
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大変面白く、また最後までドキドキしながら読めました。


特定の探偵さんは登場しません。主人公は素人探偵チャールズ・ヘイワード。
小説のタイトルはクリスティーさんお得意のマザーグースの歌からとられてます。歌の内容とストーリー進行は直接関係無いですが、殺された大金持ちの住む屋敷が「ねじれた家」であると、劇中の登場人物によって何度か会話されます。物理的にねじれているわけではなく、住んでいる家族の心がねじれているとか、被害者の考え方がねじれているとか、家族それぞれがねじれてもつれて抜け出せない家とか、そういった意味合いです。

今回嬉しいことに、クリスティー作品読み始めてほぼ初めて犯人を当てることが出来ました!主人公チャールズの父の助言がありがたかった!

※途中で犯人がわかったからといって、魅力が減るわけではありません。

残虐な犯人が迎えるあまりにも哀れな結末に関しても、クリスティーさんの優しさが注がれていて、読んでいて嫌な気分にはさせられませんでした。

あらすじ【ねじれた家】
チャールズは恋人ソフィアに求婚するが、間をおかずソフィアの祖父アリスタイド・レオニデスが毒殺されてしまう。
「事件を速やかに解決する」⇒「ソフィアと円満に結婚できる」
と考えるチャールズは、父であるロンドン警視庁副総監の助言を参考に担当のタヴァナー警部と事件解決に乗り出すが、残酷な犯人は次々と関係者を殺害していく。

作品自体が特殊な「そして誰もいなくなった」を除くとして、いつもたいてい一人くらいしか被害者の出ないクリスティー作品のなかでは多殺の方です。
2人毒殺、2人事故死というハイスコア(言い方不謹慎!)。

あと、今回も痛烈に感じたのは「クリスティー劇団」であるなあ・・・ということ。
手塚治虫さんのスターシステムやM-1の麒麟枠という命名のように、「この枠の人はこういうキャラ設定」というのがほぼ固まってます。
今作は特に登場人物の相関図、被害者と劇中で取り扱われる容疑者群の位置関係が「スタイルズ荘の怪事件」と酷似しているのに、まったく異なるストーリー展開になります。おそるべし。

今までに散見された登場人物のまとめ
(主観バリバリです。異論は認めるところであります。作中の善悪を度外視して分類しております。)

【老主人枠】
まず毒殺される。遺産は莫大。頑固。孫の誰かを溺愛している。

【長男枠】
堂々とした体格。事業を受け継いだ2代目。経営破綻で遺産が欲しい。クリスティー初読の人からまず疑われる「五匹の子豚」ではめずらしく弟がこの枠。

【次男枠】
神経質、内向的、腺病質。小説を書いたり、脚本を書いたりと演劇面に詳しい。薬等のトリビア知識もなかなか。次に疑われる人。
フタを明けてみると実はいい人だったこともまれにある。「五匹の子豚」ではめずらしく兄がこの枠。
ひらいたトランプの医者は長男枠と次男枠を足して2で割った感じ。

【未亡人枠】
老主人の若い再婚相手。美人。どんなミステリー小説素人でもまず避けて通るが、劇中の警察や素人探偵に徹底的にマークされる。殺害される主人が女主人の場合は当然この枠は男。

【女優枠】
え?女優枠?と思われるかもしれませんが、クリスティーさんの小説読んでいて、出てこないと不思議に思うほど、必ずいます。
別人を演じていたり、常に芝居がかっていたりして本心が読みにくいこともあり、各探偵と読者を悩ませる危険枠。
作品により未亡人枠や長男の嫁、次男の嫁枠と統合される。

【警察枠】
色々出てきますが、ジャップさんとバトルさんがキャラが立っているくらいで、それ以外は基本的に誤認逮捕
「そして誰もいなくなった」のブロア、「オリエント急行の殺人」のハードマンなど、外見の造形的には間違いなくこの枠。

【ヘイスティングズ枠】
ひたすら女性に弱い。困っている女性を見捨てられない。勢い余って求婚するが、いなされる率200%。推理においても恋愛においても読者からニヤニヤされる。ポアロマープルがいない作品の素人探偵。「殺人は容易だ」のルーク、「ねじれた家」のチャールズなど、該当者多数。ヘボ探偵。ただ、ヘイスティングズだけは、無意識の発言がポアロに天啓とも言える最大のヒントをあたえる。
愛すべきモナミ。

【マーストン枠】
「そして誰もいなくなった」で最初の犠牲者であるトニー・マーストン。美男子で、行動力もあり、危険な匂いも漂わせる自信家。一筋縄ではいかない若者。「動く指」のジェリー、「オリエント急行の殺人」のマックイーン、「終わりなき夜に生まれつく」のマイク・ロジャースなどがこの枠。「バートラム・ホテルにて」のマリノスキーはこの枠にしようか後述のロンバート枠にしようか悩むところ。

【ロンバート枠(冒険家枠)】
「そして誰もいなくなった」でかなりいい活躍をするも命を落とす冒険家ロンバート。野性味があり、行動力判断力に優れ、読者に安心感を与える。ポアロマープルがいない作品の素人探偵その2。トミー&タペンスのトミーはこの枠でいいはずだが、出演作品がロングスパンなのでやがて老人枠へ移行。

【美人枠(もしくは令嬢枠)】
とにかくあらゆる作品のヒロイン。頭がいい。だいたい家庭教師か令嬢。頭が良すぎてたまに「深読み読者」から疑われる。危険の真っ只中にいる。ヘイスティングズが(以下略)。トミー&タペンスのタペンスはこの枠でいいはずだが、出演作品がロングスパンなのでやがて老人枠へ移行。

【少女枠】
頭がいい。「五匹の子豚(事件当時)」「ねじれた家」「白昼の悪魔」「動く指」など、該当者多数。鍵を握っているような、いないような・・・

【老人枠】
老人枠て失礼な言い方ですね。男女問わず博識。読者が読み飛ばしている大事な情報を聞き逃さない。料理、マナーにうるさい。女性は編み物好き。
ポワロ、マープルなどもこの枠。「そして誰もいなくなった」のウォーグレイブ判事もこの枠。いかなる理由があろうとも、罪を犯した人間を許さない。

【迷惑枠別名「肩越しの視線」枠】
悪意が無いのに他人に甚大な被害を及ぼす人。たいてい自業自得ともいえる死を迎える。悪意が無いからタチが悪い。読者に「おしゃべりな人は嫌われるし、秘密を隠して生きてきた人に殺されるなあ」と思わせる枠だが終盤にならないと発言のどの部分がまずかったのかは判明しない。この枠が被害者の作品は無名だが光る。

【メイド枠】
とにかく名前がグラディス。

分類してみると以外といました。しかし、上記の特徴を備えた俳優女優が15人もいれば、全作品に対応できますよ。おそらく。
吉本新喜劇みたいで、楽しそうな舞台ですね、クリスティー劇団。
「アクロイド殺し」がどうしても上演できません。

・・・いや、開き直って原作に忠実に「アクロイド殺し」を舞台や映画化してみるのはどうだろう・・・

ダメだな!

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2009年8月26日 (水)

カタツムリ光線

ここ数日造形三昧でしたので、少し本も読みたくなるわけです。粘土作業しながらクリスティーさんの「ねじれた家」をチマチマ読んでおりますが、この作品もなかなか良いお膳立てです。
ポアロもマープルも登場しない「ノン探偵」物です。
クリスティーさんのノン探偵物は「若いカップルが主人公」というのが多いですか?今までたまたまそういうのばかり私が読んでるだけですか?
それはともかく夜も涼しくなり調子に乗るとイッキに読んでしまいそうな予感もしますので、既に読んだ「スタイルズ荘の怪事件」の方を記事にしておきます。
クリスティーさんのデビュー作でポアロさんのデビュー作でもあります。

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あらすじ【スタイルズ荘の怪事件】
戦中の負傷による療養を余儀なくされたヘイスティングズは友人ジョンに彼の別荘であるスタイルズ荘へと招かれる。
ヘイスティングズが滞在して早々、ジョンの母親でありスタイルズ荘の女主人であるエミリーが何者かに毒殺されてしまう。
ベルギーから亡命した際に住居を世話してもらい恩義を感じる元警察のポアロは、ヘイスティングズの協力のもと、悪辣な犯人に迫る。

あらすじにて「ヘイスティングズが協力」と書きましたが、全シリーズを通してヘイスティングズの推理が当たったことなんて無いと思います。
ヘイスティングズは常に語り手ですので、あまり
「私はこのとき犯人は○○だと確信した」
なんて言われてそれが当たっていても困るわけです。
ただ彼の「無関係なひとこと」がポアロに天啓を与えます。そういう意味では彼はいつも多大な協力ぶり。

さて本作はクリスティーさんのデビュー作ですが、
・療養に来た退役軍人
・女主人
・女主人の再婚相手は下品で金目当てっポイ
・毒殺
・女主人の子供ふたり、兄は陽気な社交家&嫁が超美人、弟は神経質&内向的。
・ちょい血縁の離れた美人ではないが可愛い娘
・美人に胸躍るヘイスティングズ(笑)

等々、以降の各作品にヘビーローテーションで登場する要素てんこ盛りです。安心して読めますね。
こういうのは「人物描写が類型的」という批判を生みがちですが、私は逆になぜそれがいけないのかと声を中ぐらいにして言いたい。
登場人物がわかりやすい何通りかの人物で限定されるからこそ、推理していく面白さが生まれるのだと思います。
「読んでも読んでもこの人物の性格は掴みどころがないなあ」では読んでいてしんどいだけです。

話がそれました。

デビュー作だし、そういう類型化された登場人物である程度手堅く、オーソドックスに行くのかと思ったんですが、やはりクリスティー作品はあなどれません。普通のミステリー小説ではまず避けて通るやりかたで、読み手をだまします。
なんというか・・・ここに書くわけにいかないんですが、いろんな意味で疑われない人っているもんですね。
ミステリーを読んで読んで読みまくった人こそ読むべき作品だと思います。
意外と本格的にミステリー読んだ事ない人の方が犯人は当てやすいかもしれません。
私なんかあの犯人は読み始めてまず「ん!」と思い「いや、無い無い」と除外してましたからw

ちなみに事件の舞台になった「スタイルズ荘」ですが、ポアロの最終事件「カーテン」の舞台もまた、「スタイルズ荘」です。
カーテン、いつ読もうかなあ・・・

続きを読む以降は個人的な読破備忘録です。特に目新しいことは書いておりません。

続きを読む "カタツムリ光線"

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