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2009年6月12日 (金)

過去の罪は隠せない

クリスティーさんの「マギンティ夫人は死んだ」を読みました。ポアロさんのシリーズです。
お?なんか、久しぶりにポアロさんのシリーズ読んだ気がします。

※今回はネタバレギリギリのような気がします。そういうのダメという人はブラウザの戻るボタンを押しましょう(笑)。

いまさらですが、最近やっと気付いたことがあります。クリスティーさんのミステリー小説で傑作と言われているものはどれも「過去の罪は消せない」というテーマがしかれているように思います。

「オリエント急行の殺人」は被害者が、
「予告殺人」、「カリブ海の秘密」は犯人が、
あの名作「そして誰もいなくなった」は孤島に取り残された10人の被害者全員が、

過去の自分の罪を隠しきれずに事件を起こしたり被害にあったりしています。

「カリブ海の秘密」に至っては『古い罪は長い影を落とす』という章タイトルまであり、クリスティーさんがこのテーマで小説を書くのを好んでいたことが伺えます。

『古い罪は長い影を落とす』・・・今回の「マギンティ夫人は死んだ」もまさにそれ!

あらすじ【マギンティ夫人は死んだ】
近隣の各屋敷で掃除婦として働いているマギンティ夫人が殺害され、夫人の部屋のひとつを間借りしている若い男が逮捕される。
若い男の証言はパッとせず、裁判でも有罪が決まってしまう。
スペンス警視は野心も向上心も他人への興味も薄いあの若い男がどうしても犯人と思えず、友人ポアロに再調査を依頼。
ポアロが調べを進めていくうちに、
「夫人が持っていた『過去の4件の事件を特集した新聞』の切り抜き」
「普段手紙を書かない夫人が、殺害される前日インクを一ビンも買った」
という2つの事実から、「過去の事件から逃げ、別人として暮らしている誰かの正体をたまたま知った夫人が手紙で脅迫しようとして口を封じられた」という仮説を立てる

傑作ですよ!

だいたい上記4つの古い事件から逆算して、これくらいの年齢だろうなあという女性4~5人はまず主要登場人物として出てきます。
ポアロがどう思っているかはともかく、読み手には「この人が犯人の条件に一番ピッタリですよ」と描写され続けた人物が中盤過ぎにひっくり返され、次点の人もドタンバでひっくり返され、そしてついに現れる反則ギリギリの意外な犯人。

傑作ですね。

もうね、イッキ読みです。中盤以降は途中で読むのをやめることが出来ません。
登場人物はそんなに多く無いんですが、マギンティ夫人とは別に「過去の事件から逃げてきた人」「過去の事件を追いかけてきた人」2種類の人がいて、事件を単純なものにせず、読み手を飽きさせません。

ふだんえらそうなポアロさんが知名度ゼロの土地で自尊心をキズつけられ、しかも安普請のホテルで酷い食事に耐えながら事件を解決していく姿もいつもと違って新鮮です。

ちなみに「マギンティ夫人は死んだ」という単純な節回しの童謡があるそうですが、日本人の私にはカケラも想像できません。
「ゴンベさんの赤ちゃんが風邪引いた」みたいな童謡なんでしょうか?
わらべうたが出てくるから「さあ!見立て殺人?」というとそうでもなく、連続殺人というには被害者も少なめ。
しかしそれでも傑作間違いなしと思えるのは、見立てとか連続殺人というキャッチーなギミックに頼らないクリスティーさんの底力といえるでしょう。

すでに次を仕入れました。今度はマープルモノで「鏡は横にひび割れて」です。

これまでクリスティー作品を読んできた経験(まあ、そんなに大して読んではないですが)からいって、叙情的なタイトルには怪作が多いので要注意です(笑)。

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